2025年施行が予定されている建築基準法と建設業法の改正は、今後の建築業界にとって大きな影響となります。そしてこのニュースは、これから店舗を開業しようとしている人や、リニューアルを考えている人にとっても重要です。理由はこの改正によって、今後の店舗の設計や建築に影響が出る可能性があるからです。
「具体的にどんな影響があるんだろう?」
「何に気を付ければいいんだろう?」
今回はそういったお悩みが解決するように、これらの改正が、店舗開業やリニューアルにどのような影響を与えるのかを分かりやすく解説していきます。
建築基準法とは?
建築基準法は、日本国内の建物が安全で快適に利用できるよう、一定の基準を定めた法律です。地震や火災への耐性、換気や採光などの環境基準、防火対策が含まれ、建物の用途に応じた規制も設けられています。
また、近年ではバリアフリーや省エネルギー性能に関する基準も強化され、誰もが使いやすく、環境に優しい建物が求められています。この法律によって、建物の安全性と周辺環境への配慮が図られます。
建築業と建設業の違い
「建築業」と「建設業」は似ているようですが、実は少し違います。建築業は、一般的に住宅やビルなどの「建物」をつくる仕事に関わる業種です。一方で、建設業はもっと広い範囲を指します。たとえば道路や橋、トンネル、上下水道、ダムといったインフラ(生活を支える設備)をつくる仕事も含まれます。
つまり、建築業は「建物」をつくることに特化した仕事で、建設業全体の一部にあたります。建設業は私たちの生活に大きく関わっています。
建設業法とは?
建設業法は、建設業を適正に運営し、建物やインフラの品質を確保するための法律です。この法律は、建設業者が国や自治体に登録し、適切な資格を持つ技術者が工事を管理することを義務付けています。
また、元請け業者と下請け業者の契約関係の適正化や、工期や費用に関するトラブル防止を目的としたルールも含まれています。加えて、労働者の安全確保や働き方の改善も求められ、建設業界全体の健全な発展を支えるために重要な役割を果たしています。
2025年の建築基準法改正とは?
2025年4月に施行される建築基準法の改正について、抑えておくべきポイントについて説明します。この改正では、特にエネルギー効率や木造建築に関する基準が大きく変更されます。以下の5点が主な改正点です。
四号特例の縮小
「四号特例」とは、2階建て以下や延床面積500㎡以下の小規模木造住宅において、構造に関する審査が省略される特例のこと。しかし2025年の建築基準法改正により、この特例が大幅に縮小されます。これにより、リフォームや新築の際に、これまで不要だった建築確認申請が必要となるケースが増える見込みです。この改正は、耐震性や安全性を確保するためのもので、リフォーム費用や工事スケジュールにも影響を与える可能性があります。
大規模木造建築物の防火規定の変更
大規模な木造建築物(床面積3,000㎡以上)の防火規定が変更され、柱などの構造木材をそのまま露出させたデザインができるようになります。ただし、火災対策として、防火区画の設置や強化が求められるため、安全性を確保しながらデザインの自由度が広がります。これにより、木材を使った魅力的なデザインが増えることが予想されます。
木造建築物の構造計算基準変更
改正前は、大きな木造建築物(床面積3,000㎡以上)では、耐火構造で木材部分を覆うか、区画ごとに耐火仕切りが必要でした。しかし改正後は、防火対策を行うことで木材を露出した「表し(あらわし)」デザインが可能になります。これにより、木の質感を活かしたデザインがしやすくなり、内装や外観で木材の利用が拡大すると期待されています。
中層木造建築物の耐火基準の緩和
5〜9階建ての中層木造建築物についても耐火基準が緩和されます。これまでは厳しい基準があったため、木造建築のコストが高くなるなどの制約がありましたが、改正により、別棟部分が90分間の耐火性能を確保できれば木造建築が可能になります。この改正によって、商業施設や集合住宅に木材を使った建物が増え、都市部での木材利用が進むでしょう。
既存不適格建築物の一部免除
既存不適格建築物とは、過去の基準では合法だったものの、現在の建築基準法に適合していない建物です。こうした建物に対して、2025年の改正で現行基準の一部を免除する規定が導入されます。これにより、敷地と道路が接していない既存不適格建築物でも、省エネ改修や耐震改修を行う際にリノベーションがしやすくなります。これにより空き家問題の解決や、古い物件の再利用を促進することが期待されています。
これらの改定は、エネルギー効率の向上、安全性の強化、環境に配慮した建築を促進するもので、持続可能な社会の実現に向けた重要な変更となっています。
店舗開業やリニューアルにどんな影響がある?
2025年に施行される建築基準法改正は店舗の開業やリニューアルにどう影響するのでしょうか。
コストが増える可能性
強化される消エネ基準に合わせるため、これまで以上のコストがかかることがあります。たとえば、断熱性能の高い材料を使ったり、エネルギー効率の良い設備を導入する必要が出てきます。そのため、店舗を新しく建てる場合や、リニューアルする場合の費用が高くなる可能性があります。
木材を活かした店舗デザインが増える
防火規定の緩和により、木材を内外装に多用したデザインの店舗が増えるかもしれません。木材を使った店舗は、自然のぬくもりが感じられ、特にアパレルショップやカフェなどでは人気があります。リラックスした雰囲気を店舗デザインに活かしたいオーナーであれば、デザインの選択肢が増えるでしょう。
申請の手続きが増える
これまでは免除されていた小規模な建築物の構造申請が必要となるため、そのぶん開業までの期間が伸びることになるでしょう。ここは設計事務所や建築業者としっかり連携して進める必要があります。
2025年に建設業法改正もある
建築基準法だけでなく、2025年には建設業法改正の施行も予定されています。この改正では、特に建設業界で働く人々の環境改善に重点が置かれています。以下が主な改正内容です。
改正内容 | 詳細 |
労働者の処遇改善 | 建設業に従事する人々の働き方を改善し、待遇を向上させる。低すぎる見積りを禁止するなど。 |
資材高騰に伴う労務費への影響を改善 | 請負代金の変更方法を契約書の特記事項として明文化する。資材高騰に伴う施工費の改定には誠実に対応する義務が生じるなど。 |
労働時間の適正化 | 著しく短い工期で発注してはならない。業務効率化のために必要な情報通信端末を用意するなど。 |
まとめ
2025年の建築基準法と建設業法の改正は、店舗の開業やリニューアルに大きな影響を与えることが予想されます。省エネ基準の強化や木造建築に関する規定の緩和により、木材を活かした店舗デザインが増えることが予想される一方、コストや手続きが増える可能性もあります。
これから店舗を開業したい人やリニューアルを考えている人は、これらの改正点を理解して計画を進めるようにしましょう。株式会社TOでは、法改正にも対応した店舗デザインのご相談を承っております。ご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。