建築や店舗デザインの分野で、キャンティレバー構造という言葉を耳にされた方は多いのではないでしょうか。キャンティレバー構造を上手く活用することで、建物の空いたスペースを有効活用に繋がります。
今回はキャンティレバー構造の基礎知識からメリット・デメリットまでを詳しく解説していきます。ぜひ、最後までお読みください。
キャンティレバーとは
キャンティレバーとは、片持ち梁(Cantilever Beam)のことです。梁やスラブなどの部材の片方だけが固定されていて、片方は空中に浮いている方持ち式構造のことです。
基本的には、鉄筋コンクリートなどの素材で建てられ、木造住宅ではほとんど使用されません。木造住宅でキャンティレバー構造を用いる場合は、持ち出し梁で作られたバルコニーに限られます。マンションでは、バルコニーや外部の片側廊下などによく用いられます。
キャンティレバー構造にするメリット
キャンティレバー構造を用いるメリットは以下3つです。
- キャンティレバーの下を有効活用できる
- デザイン性を出すことができる
- 土地探しの幅が広がる
デザイン性と機能性を兼ね備えているのがキャンティレバー構造のメリットといえるでしょう。それでは、詳しくみていきましょう。
①キャンティレバーの下を有効活用できる
キャンティレバーの下は、駐車場や玄関ポーチ、テラスなどに使用できます。キャンティレバーが屋根代わりになるため、駐車場にするならカーポートに。飲食店などでは日差しや雨を防ぐスペースとして活用できます。利用する用途に合わせて、キャンティレバーの広さをどのくらい取ればいいのかを考えてみましょう。
②デザイン性を出すことができる
外から見るとアートのような印象を与えるのが、キャンティレバーの特徴です。一般的な建物は、外から見ると平面なデザインになっています。キャンティレバーは、凹凸があり、立体をイメージさせます。他の住宅や建物と差別化を図りたい場合にもおすすめです。
③土地探しの幅が広がる
建物を建てる土地探しは、理想の間取りから考えた上で、合致する土地を探していきます。そのため、立地はいいけど土地が狭いという理由で、あきらめるパターンが多いです。都市部や人気のある地域の場合は、高額で狭い立地が多いです。キャンティレバー構造を取り入れる前提で土地探しをすることで、選択の幅がグッと広がります。
キャンティーレバー構造にするデメリット
キャンティーレバー構造のデメリットは、主に「耐震性を保つのにコストがかかる」と「自由設計のためコストが多くかかる」の2つです。キャンティーレバー構造を取り入れるか検討する際は、必ず上記のデメリットを考慮してください。それでは、2つのデメリットを詳しくみていきましょう。
①耐震性を保つのにコストがかかる
キャンティレバー構造にすると、1階の面積が小さくなってしまうため、出っ張っている部分への強度対策が必要になります。強い耐震補強工事をおこなうことや構造内の重い部分と軽い部分の使い分け、柱の位置の調整や追加が必要です。
②自由設計のためコストが多くかかる
キャンティレバーは、特徴的な構造であるため完全な「自由設計」となります。建築費用が一般的な設計費用より高くなります。設計や施工ができる経験豊富な業者が少ないため、見積もりや比較がしにくいのも建築費用が高くなる要因の一つとなります。
キャンティレバー構造の注意点
キャンティレバー構造の注意点は以下の通りです
- 建ぺい率と容積率の関係には要注意
- キャンティレバーの後付けは難しい
①建ぺい率と容積率の関係に注意
キャンティレバー構造にするさいは、建築基準法の建ぺい率と容積率の関係に細心の注意を払いましょう。最悪の場合、違法建築となり処罰の対象となる可能性があります。
「建ぺい率」は、敷地面積に対する建築面積(建物を真上からみたとき)の割合のこと。建物の一番大きい面積が対象となります。キャンティレバー構造だと、1階の面積は小さくなりますが2階の面積が大きくなるため、注意しなければなりません。
「容積率」は、土地面積に対する延べ床面積です。容積率で定められている基準の範囲でしか延べ床面積が広くできません。キャンティレバーを導入する場合は、トータルの延床面積にも気をつける必要があります。「建ぺい率」と「容積率」を頭に入れながら、事前に土地を調べておきましょう。
②キャンティレバーの後付けは難しい
キャンティレバー構造は特殊な工事が必要となるため、リフォームやリノベーションで後付けが基本的にできません。場合によってはできる可能性がありますが、大がかりなリノベーションとなるので、日数と費用ともに多くかかります。
まとめ
この記事では、キャンティレバー構造の基礎知識からメリット・デメリットまでを詳しく解説してきました。ポイントを抑えて、キャンティレバーを取り入れてみてください。
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