桟(さん)とは?特に戸や障子に使われる建築用語をわかりやすく解説します|横桟や縦桟の違いって?

建築設計デザインの基礎知識
建築設計デザインの基礎知識

建築用語としての桟(さん)とは、建材の一種。戸や障子の枠・骨組みとして使用されています。一般住宅の中でも多数使用されていますので、それが桟だと知らなくても見かけたことがある方は多いでしょう。

桟について知りたいと思ったあなたは、もしかしたら住宅購入を検討していたり、店舗オーナーになる予定があるかもしれませんね。建築は専門用語が多く、知らない言葉が出てくると不安になるもの。

設計の打ち合わせの場で困ることがないように、今回は私たちの日常生活に意外と密接な関係にある桟について、その種類や役割をわかりやすく解説していきます。

また、桟と間違えやすい建築用語の梁(はり)や柱についても解説していますので、より理解が深まりますよ。

こちらの記事で掲載している店舗の画像は、すべて私たち株式会社TOでデザインいたしました。気になるデザインがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

桟とは

桟とは

桟とは建材の一種で、戸や障子などの建具や、屋根や天井などの建築の躯体にも使用される横木や縦木のことです。建築物の強度や安定性を保つ役割を果たしています。また、美観を考慮した装飾的な要素としても使われることがあります。

「桟」という漢字は、訓読みで「かけはし」と読み、「渡す」という意味を含んでいます。かつて、木と木を組み合わせて作っていた橋に語源があります。漢字をよく見ると、木へんに棒が組み合わせっているように見えて、わかりやすいですね。「渡す」という意味を汲んで、今でも「桟橋(さんばし)」という言葉で使われます。

なお、常用はされませんが、「えつり」とも読みます。桟(えつり)は、古民家建築などで用いられる言葉で、茅葺屋根や、土壁の下地の細い竹を交差させたものを、桟(えつり)や桟竹(えつり竹)と呼びます。

桟にはいくつか種類があります

桟の種類

桟にはいくつかの種類があります。屋根に瓦を葺くために渡す桟のことを「瓦桟(かわらさん/かわらざん)」と呼んだり、天井裏に取り付ける桟のことを「裏桟(うらざん)」と呼びます。

その中から今回は戸や障子に使用される骨組みとしての桟について解説します。戸や障子の桟には主に「横桟(よこざん)」「縦桟(たてざん)」があります。それぞれを以下に解説します。

横桟(よこざん)

戸や障子に使用される横桟とは、横方向に組み込まれた桟のことを言います。通常は水平方向に取り付けられます。

縦桟(たてざん)

縦桟とは縦方向に組み込まれる桟のことを言います。垂直方向に取り付けられます。横桟と縦桟を組み合わせて戸や障子の骨組みができます。

桟の役割とは

桟は骨組みに使われる部材なので、重要ではあることはわかるのですが具体的にどんな役割があるのでしょうか。以下に解説していきます。

構造の強化

障子建具

桟は戸や障子の構造を強化する役割があります。桟があることで、破損や変形を防ぐことができます。特に戸や障子は扉として、部屋から部屋へ移動するために日々使用されています。

戸や障子などの建具は左右に開閉する扉です。開閉する際は、敷居(しきい)や鴨居(かもい)と呼ばれるレールの中を移動します。もし桟の役割が弱く、建具が変形してしまった場合、動かすことが難しくなり扉としての役割が果たせません。

また建具は日常的に使用されるからこそ、構造は頑丈でなければなりません。戸や障子はプライバシーの保護や、空調効率をキープするためにも必要な建具です。ある程度乱暴に扱っても壊れないように桟の役割は重要になります。

ただし、重要だからといって必要以上に桟を使用すると、重たくなりすぎるというデメリットが発生します。戸や障子が重すぎてしまうと、開閉が困難になります。大工や職人は頑丈さと扱いやすさの両面のバランスを考慮して製作します。

装飾的な要素

桟の役割

縦桟、横桟といった構造を支える桟ですが、美的要素として装飾的な役割もあります。戸や障子は意匠として、日本の伝統工芸の世界で製作されてきた背景があります。

例えば組子桟(くみこざん)と呼ばれるものは、職人の高い技術と日本の伝統的な美的感覚を伝える工芸品です。視覚的な美しさも備えながら、桟として建具の強度を高める役割もはたしています。

高級料亭で多く使用される障子や、伝統工芸品の箪笥(たんす)の扉など、装飾的な要素をもつ桟は様々なところで見ることができます。

桟の歴史

桟の歴史

桟は日本の建築において長い歴史があります。特に戸や障子、襖(ふすま)といった建具には桟は欠かせない要素です。特に江戸時代からは装飾的な要素としての桟の文化が発展しました。

現代でも、京都や秋田など組子細工が盛んな地域で伝統美をたたえる桟が生産されています。住宅はもちろん、旅館や小売店などの商業施設においても見ることができます。

桟と似ている建築用語

ここで桟とよく間違われやすい建築用語についても解説します。

框(かまち)

框(かまち)

框は床や窓の枠となる部材のこと。構造の強化や美観の向上などの役割があります。桟と重なる部分もあり、縦桟のことを縦框(たてがまち)、横桟のことを(よこがまち)と呼ぶこともあります。框は玄関や縁側の床部分にも使用されるので、そこが桟とは違う部分です。

柱(はしら)

柱(はしら)

柱は建築物の構造を支える垂直方向に設置される部材です。骨組みという意味では縦桟と役割が似ていますが、一般的には建築物を支えるものとして使用されます。柱は目的に合わせて、様々な素材が使用されます。

木柱 木材を使用した柱。主に木造住宅などで使用される。
鉄骨柱 鋼製の柱。住宅やビルに使用される。
コンクリート柱 鉄筋とコンクリートで作られた柱。長寿命で高耐久。

戸や障子といった建具の骨組みは桟。建築物の垂直方向の骨組みが柱という使い分けが理解しやすいでしょう。

梁(はり)

梁(はり)

梁は建築構造の柱と柱の間に水平に架けられる建築部材です。役割としては横桟と似ていますが、建築物の骨組みとして、水平方向に支えるものは梁と呼ばれます。

日本の木造住宅では、天井にある梁をデザインの一部として見せる方法もあります。例えば古民家などでは、経年変化した梁がビンテージ感を演出しますし、現代の和室でも木製の梁を装飾的な要素として使用されています。

筋交い(すじかい)

筋交い(すじかい)

筋交いは建築の構造において、柱や梁の間に斜め方向に架けられる部材です。筋交いがあることによって、横方向の揺れに強くなり建物の倒壊を防ぐ効果があります。

地震や台風など自然災害が多い日本において、建物が揺れに強いことは重要です。骨組みという意味では桟と役割が近いのですが、建築用語としては別物になります。

まとめ

組子桟

桟とは、戸や障子などの建具の構造をささえる骨組みのこと。桟は建具の強度を保つために必要不可欠。普段はあまり意識することがない部材ですが、とても重要です。

骨組みとして水平方向に組み込まれたものは横桟(よこざん)と呼び、垂直方向に組み込まれたものは縦桟(たてざん)と呼びます。

桟には装飾的な要素もあり、特に組子細工が施された組子桟は、伝統的な日本建築の美を演出する用途で様々な場所で使用されています。

桟と良く間違われる言葉としては、框(かまち)、柱、梁(はり)、筋交い(すじかい)がありますが、桟は戸や障子などの建具に使用される建築用語なのに対し、それ以外の言葉は建築物に使われることが多いです。

住宅や店舗のオーナーになる場合、営業や設計の方との打ち合わせの中で知らない専門用語がでてくることもあるでしょう。不安なく打ち合わせをすすめるにあたり、出来る限り学んでおきましょう。

私たちTOは木材を使ったデザインにこだわりを持っています。木材に対する想い・木を使用したデザインの強みはこちらの特集ページでも詳しくご紹介しています。建材としての木材には、デザイン性の他にも様々なメリットがあります。木がお店に与えるデザイン的な効果と、部材としてのメリットを解説します。