店舗オーナーを目指すなら、店舗運営における大きなコストになる電気代と、節電方法について知っておきたいですよね。なぜなら効率的な節電は経費削減になり、利益をより多く残すことができるので快適なビジネス運営にもつながります。
また近年のエネルギー価格の上昇や環境意識の高まりから、省エネルギーをうたった設備もたくさん見かけるようになりました。そのため、店舗での節電はますます注目されています。
そこで今回は、店舗の電気代の仕組みを理解した上で、具体的な節電ポイントや経費削減に役立つ設備投資・店舗デザインについて解説します。
店舗の電気代の仕組みを理解しよう
まず電気代を効果的に削減するには、まず電気料金がどのように構成されているのかを理解することが大切です。電気代の内訳は主に以下の3つで構成されています。
基本料金
電気代の「基本料金」とは、電力会社が設定する固定料金で、電気の使用量に関係なく毎月支払う料金です。基本料金には「アンペア制」と「最低料金制」の2種類があります。アンペア制では、契約アンペア数に応じて基本料金が設定されます。
契約アンペア数が大きくなるほど、基本料金は高くなります。最低料金制では、契約アンペア数に関係なく最低料金が固定されています。設定されている電力量を超えた場合は、超えた分の料金が上乗せされます。
電力量料金
実際に使用した電力量に応じて発生する変動費用です。消費電力量が多いほど、ここが増加します。計算方法は「電力料金単価×使用した電力量±燃料費調整額」です。
再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギーを普及させるための費用で、電力量に比例して課金されます。1kWh(キロワットアワー)あたりで全国一律の単価が設定されています。電力消費を減らすことで削減可能です。
この仕組みを理解した上で、効果的な節電対策を見ていきましょう。(※契約する電力会社によって計算方法が変わります)
設備投資と店舗デザインで節電効果を高めるポイント
節電で利益を残していくにはどのようなポイントがあるのでしょうか。設備投資と店舗デザインの視点から、以下のようなポイントがあげられます。
①電気代がかかる箇所を把握する
②エアコンの温度設定
③節電タイプのトイレ
④照明をLEDに
⑤電子ブレーカーを採用する
⑥間仕切り壁の設置
これから店舗を運営したい方でも、すでに運営中のオーナーでも検討できるポイントです。詳しく解説していきますね。
電気代がかかる箇所を把握する
節電の第一歩は、店舗内でどの設備が多くの電力を消費しているかを把握することです。特に、空調、照明、飲食店であれば厨房機器などが主な消費源となります。
例えばエネルギー管理システム(EMS)を導入することで、設備ごとの電力消費量を一元で把握・制御することができます。ただし、導入には初期費用がかかることがデメリット。EMSの導入が難しい場合、まずはランニングコストがかかる空調、照明、厨房機器といった箇所から改善すれば節電の効果は高いでしょう。
エアコンの温度設定を最適化
空調設備は電力消費の大きな割合を占めますが、適切な温度設定で効率的に節電できます。環境省では、快適性を損なわない範囲で省エネを実現するために室温を以下にすることを推奨しています。
- 冷房時:28℃
- 暖房時:20℃
※室温の目安であり、エアコンの設定温度ではありません。
また、エアコン設定温度を1℃緩和した場合の消費電力量は、冷房時約13%、暖房時約10%削減されることが見込まれています。お客様や従業員が快適に過ごせる範囲で、エアコンの温度設定を調整してみましょう。
さらに、以下の工夫を取り入れると効果的です。
- サーキュレーターや天井ファンを併用して空気を効率的に循環させる。
- フィルターの清掃や定期メンテナンスを行い、機器の効率を維持する。
エアコンのみでは、店舗全体に快適な風が行きわたるのに時間がかかりますが、サーキュレーターや天井ファンがあれば、より素早く快適な室温になります。
天井ファンは工事が必要になるため、店舗設計の段階から導入を予定していることが望ましいのです。サーキュレーターは購入しやすい価格のものが市販されており、店舗開業後からでも取り入れやすいです。ぜひ、店舗デザインのイメージに合う製品を選びましょう。
節電タイプのトイレを導入
トイレ設備も電力消費の隠れた要因です。特に、温水洗浄便座や便座ヒーターは常時電力を消費します。節電タイプのトイレを導入することで、大幅なコスト削減が可能です。
例えば便座には、営業時間の8時間のみ便座を温めておくタイマー機能や、最低限の温かさにしかならない省エネ機能などがあります。このような節電に適した製品を導入しましょう。
また、節電と共に節水機能を備えた製品もあります。機能が豊富だと初期費用がかかることもありますが、長期間使用する設備ですし、お客様の満足度にも影響します。コストバランスをよく考慮して選定するとよいですね。
照明をLEDに切り替える
照明をLEDに変更することで、消費電力を削減できます。LEDは白熱電球や蛍光灯に比べて寿命が長く、消費電力が少ないのが特徴です。昔ながらの白熱電球は温かみがあり、独特の雰囲気があります。
しかし近年のLED電球は開発がすすみ、白熱電球に似た雰囲気のままで消費電力を抑えられる製品も増えてきました。加えて、以下のような工夫を取り入れるとさらに効果的です。
- 人感センサーを導入して、使用していないエリアの点灯を防ぐ。
- 明るさの調整が可能な調光システムを活用する。
LEDは調光・調色が自在で、長寿命です。節電の観点からもおすすめの光源です。ぜひ可能な限り照明はLEDを採用することをおすすめします。
電子ブレーカーで基本料金を削減
電子ブレーカーは、店舗などの電力量を安全許容範囲内で使用できるよう制御するブレーカーで、消費電力を最適化するための設備です。従来のブレーカーよりも精密に電力を制御できるため、料金を削減する効果があります。契約する電力会社に導入可能かを問い合わせることができます。
例えば、店舗のピーク電力使用を抑えることで、無駄な契約容量を見直すことが可能です。状況によりますが、毎月数万円から数十万円程度、電気代を抑えられる事例もあります。電子ブレーカーの導入は初期投資は必要ですが、長期的な電気代削減につながります。
間仕切り壁で効率的な空調と照明を
店舗内のエリアごとに間仕切り壁やパーテーションを設置することで、照明や空調を効率的に運用できます。これにより、次のような効果が期待できます。
- 空調効率の向上:限られたエリアに集中して空調を効かせる。
- 営業外の節電:待機時間中は一部エリアのみ稼働させる。
開業前であれば、設計士と相談しながら最適な場所に間仕切り壁を設置することができます。もし既に開業済みであっても、パーテーションであれば後付けが可能です。ぜひ店舗デザインに合ったパーテーションを導入しましょう。
まとめ
店舗での節電は、電気代の仕組みを理解し、具体的な対策を実行することから始まります。エアコンの温度設定、LED照明、節電トイレや電子ブレーカーの導入など、効果的な設備投資を取り入れることで、お客様や従業員の快適性を下げることなく電力消費を最適化できます。
節電は店舗を運営し続ける以上、ずっと必要な対策です。また、会社の利益を守ることにもつながります。ぜひ経費削減と環境負荷軽減を両立し、効率的な店舗運営を実現しましょう。
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