店舗開業時に抑えておきたい防火区画とは?正しく理解して店舗設計をスムーズに進めましょう

店舗独立開業のポイント
店舗独立開業のポイント
「店舗デザインを考えているんだけど、防火区画のことを理解した方がいいのかな?」
「防火区画について詳しく知りたいと思っている」

このように、店舗の開業に伴い店舗デザインを考える中で、防火区画の基準を守らなければならないと分かっているけど、防火区画を理解できていない方は、多いのではないでしょうか。この記事では、店舗開業時に覚えておくべき防火区画について詳しく解説していきます。

店舗を設計する際に意識しなければならないのが防火区画。人の命を守るために定められている建物を建てる際の決まりです。定められている防火区画を守らずに設計してしまうと、店舗の開業ができなくなってしまう可能性が。防火区画の知識をつけて店舗設計をスムーズにおこなうためにも、この記事をチェックしてみてください。

店舗を開業する時に知っておくべき防火区画とは?

防火区画とは?

防火区画とは、店舗で火災が発生した際に炎や煙が広範囲に行き渡らないようにするために設ける区画のことです。火災が発生しても、1時間以上耐えられる耐火性能を持った素材を壁・床・天井に使用する必要があります。

基本的に火に強いコンクリートを床に使用し、壁や天井にはコンクリートやALC、防火区画の基準を満たしている石膏ボードを使用します。

従って、店舗を開業する際は、万が一火災が発生した時に火災を最小限に抑える区画を設け、定められている素材を使用しなければなりません。特に、火を取り扱う飲食店は火災が発生しやすいため、防火区画について深く理解しておく必要があるでしょう。

防火区画は5つの種類が存在する

防火区画の種類

防火区画は以下5つの種類に分類されます。

  • 面積区画
  • 水平区画
  • 竪穴区画
  • 異種用途区画
  • 高層区画

上記5つの違いを知ることで、防火区画の理解が深まることでしょう。それでは、これから詳しく解説していきます。

面積区画

面積区画とは

面積区画は、床面積が大きい建物にかかる防火区域の規制になります。面積区画の種類は、「1500㎡区画」「1000㎡区画」「500㎡区画」の3つになります。どの大きさの面積で区画をするかで規制が変わります。規制が一番緩いのが500㎡で区画する場合です。対象建築物が以下になります。

1500㎡ 主要構造部を耐火構造とした建築物・準耐火建築物
1000㎡ 主要構造部が準耐火基準に適する準耐火構造・不燃材料で造られた準耐火構造と同等の耐火性能を持っている
500㎡ 主要構造部が準耐火構造と同じ程度の対価性能を持っている・仕切り壁を45分間準耐火基準に適する準耐火構造

1500㎡と1000㎡、500㎡の面積区画をする場合は、区画する壁と床の構造を1時間準耐火構造にし、特定防火設備を設ける必要があります。

しかし、500㎡の面積区画だけ防火上主要な間仕切り壁が必要です。間仕切り壁は、45分準耐火構造で造る必要があり、「居室と避難経路を区画する壁」と「火気使用室とその他部分を区画する壁」に設ける必要があります。また、間仕切り壁は小屋裏までする必要があるので注意しましょう。

※階段室の部分と昇降機の昇降路の部分に関して、特定防火設備で区画されている1時間準耐火構造の床または壁は500㎡の面積区画が免除されます。

面積区画の基準緩和

自動式のスプリンクラー・水噴霧消火・泡消火設備などを設置した部分は、床面積の1/2を面積区画から外すことができます。

水平区画

水平区画

文字通り水平面を区画するのが水平区画。水平面にあたるすべての床を耐火構造にすることで、下で発生した火災を防ぎます。しかし、水平区画が防火区画の問題となるケースはほとんどありません。準耐火建築物や耐火建築物は、もともと床が耐火構造になっているためです。

竪穴区画

竪穴区画

竪穴区画は、階段やエレベーターの吹き抜けなど、火災が発生した際に炎や煙が階をまたいで縦方向に拡がる箇所に設ける区画です。3階または地階に居室があり、以下に該当する場合は、竪穴区画をする必要があります。

  • 主要構造部を準耐火構もしくは耐火構造の建物
  • 延焼防止建築物
  • 準延焼防止建築物

竪穴区画の床と壁は、準耐火構造またh耐火構造にし、開口部を延焼性能付きの防火設備もしくは特定防火設備にしなければなりません。

「避難階段の上下階で一層のみ通じる吹き抜けの部分」と「階数が3以下で床面積が200㎡以内の住宅部分」は、竪穴区画の基準緩和の対象となります。

竪穴区画のスパンドレル

竪穴区画に接する外壁には、建物の内側から外を経由した炎の回り込みを防ぐためのスパンドレルを設ける必要があります。以下2つのどちらかを採用しなければなりません。

  • 幅90cm以上の外壁か外壁から50cm以上突出したバルコニー
  • 外壁から50cm以上突出した袖壁

異種用途区画

異種用途区画

異なる用途で建物を使用する際に異種用途区画が必要になります。店舗で異種用途区画が必要となるのか以下です。

  • 3階以上の階で床面積が500㎡以上の場合

たとえば、3階建ての住宅に店舗が入っている場合は、異種用途区画を設ける必要があります。異種用途区画の壁と床は、1時間準耐火基準に適した準耐火構造にしなくてはなりません。

また、異種用途区画の壁に開口部を設ける際は、特定防火設備を設置する必要があります。竪穴区画で必要であるスパンドレルは、異種用途区画に設ける必要はありません。

異種用途区画の免除項目

以下に該当する場合は、異種用途区画が免除されます。

  • 管理者が同一の場合
  • 利用者が施設を一体として使用する場合
  • 利用時間が同じである場合

免除基準は複雑なので確認検査期間に相談してみるといいでしょう。

高層区画

高層区画

高層区画が必要となるのは、建物の11階以上の部分。以下の建物の11階以上部分に該当する場合は、高層区画を設ける必要があります。

  • 一般の建築物→床面積100㎡以内ごとに区画する
  • 内装仕上げが準不燃材料(床から1.2m以上の範囲)→床面積200㎡ごとに区画する
  • 内装仕上げが不燃材料(床から1.2m以上の範囲)→床面積500㎡ごとに区画する

壁・床に関しては耐火構造にし、一般建築物の開口部は防火設備、その他は特定防火設備にして炎を遮るようにする必要があります。内装の仕上げと建築用途によって防火設備の種類が変わってくると考えるといいでしょう。

高層区画のスパンドレル

高層区画は、竪穴区画と同様に以下どちらかのスパンドレルを設ける必要があります。

  • 床や壁が接する外壁はに対して、幅90cm範囲を準耐火構造とする
  • そで壁を50cm以上突出させて、開口部から出てくる炎の拡がりを防ぐ

上記2つのどちらかを取り入れれば問題ないでしょう。

高層区画の基準緩和部分

高層区画の基準が緩和される部分は、「階段室」と「昇降機の昇降路」、「廊下など避難のための部分」の3つです。覚えておくといいでしょう。

まとめ

防火区画の抑えるべきポイント

この記事では、店舗開業時に覚えておくべき防火区画について詳しく解説してきました。この記事の重要ポイントは以下です。

  • 防火区画とは、店舗で火災が発生した際に炎や煙が広範囲に行き渡らないようにするために設ける区画
  • 防火区画は、1時間以上耐えられる耐火性能を持った素材を壁・床・天井に使用する必要がある
  • 面積区画の種類は、「1500㎡区画」「1000㎡区画」「500㎡区画」の3つ
  • 面積区画は、500㎡区画が一番厳しく、1500㎡区画が一番緩い規制
  • 500㎡の面積区画だけ防火上主要な間仕切り壁が必要
  • 水平区画が防火区画の問題となるケースはほとんどない
  • 3階または地階に居室があり「主要構造部を準耐火構もしくは耐火構造の建物」「延焼防止建築物」「準延焼防止建築物」に該当する場合は、竪穴区画をする必要がある
  • 竪穴区画と高層区画にはスパンドレルを設ける必要がある
  • 3階建ての住宅に店舗が入っている場合は、異種用途区画を設ける必要がある

防火区画は複雑なため、初めての方だと理解するのに苦労することでしょう。分からない場合は、デザイン設計事務所などに店舗デザインを依頼すると確実です。上記のポイントを押さえて、防火区画を考慮した店舗作りをしてみてください。

株式会社TO(ティーオー)は、飲食店の設計を得意とするデザイン設計事務所です。これまで様々な業態の飲食店様のデザインを承って参りました。私たちのデザインしたデザイン事例はこちらのページをご参照ください。