【店舗開業】現地調査の流れと絶対に確認しておくべきポイント

客席の設計 店舗独立開業のポイント
店舗独立開業のポイント

出店を計画しているときに、目にする言葉として「現地調査」というものがあると思います。言葉はわかるけど、具体的に何をしたらいいのかわからない方のために、物件の立地や周辺地域の現地調査に関して説明していきます。

物件の内覧の際のポイントではないので、注意してください。物件の内覧の際のポイントではないので、注意してください。物件の内覧の際のポイントは、こちらの記事で解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。

現地調査の目的

物件の現地調査の目的

物件の現地調査の目的は「物件を評価すること」です。具体的には、その物件で出店した際に長期的な収益を見込むことができ、かつ維持していくことができる立地・物件になっているかを考え、契約するかどうかの判断をすることとなります。次からは実際の現地調査のポイントを見ていきます。

現地調査のポイント

現地調査のポイント

①【事前】各種統計データを取得する

現地調査を行う前に、必要な資料を行政や各種団体から収集しましょう。必要に応じて現地に持っていくなどするために、事前に準備するのがベターです。

例)人口総数、第2次・第3次産業従業者数、小売業年間販売額、生徒学生数、駅乗降客数など

②【現地】人の流れを確認する

現地調査の第1段階としては、駅の改札を出て、どちらに向かう人が多いかを確認します。
その際に、どのような人がどちらの方向に向かっているのかも併せて確認しましょう。例えば、スーツを着た人が住宅街がある方面に向かっているとすると、時間帯にもよりますが、帰宅しているか、仕事で向かっている可能性があります。

また、若年層が商業施設がある方面に向かっているとすると、仕事か買い物や食事に向かっていると考えることができます。このように、どの層がどの方向に向かっているかで、ある程度はその駅周辺がどのような商圏になっているのかを判断することができます。

③【現地】人の流れの先には何があるのか確認する

人の流れの先には、必ず目的地があります。住宅地だったり、トラフィック・ジェネレーター(TG)と呼ばれる人が多く集まる施(集客施設)がある場合が多いです。目的地として何があるのかを確認し、実際にその流れに乗って歩いて見ましょう。その時に、その施設に向かっている人はどのような人が多いのか、道中に競合となりそうな店舗があるかを見ながら歩くのが良いでしょう。

何度も往復してもいいですが、それほど通行量の多くないところでは、怪しまれてしまうこともありますし、時間も無駄にしてしまう可能性もありますので、同時に確認しておくのがおすすめです。実際にその施設に向かう際には、駅やバス停などからその施設までどれくらいなのか、距離と時間も併せて計測しておきましょう。

④【現地】通行量を確認する

人々の行動の流れがつかめてきたら、各流れごとにどれくらいの通行量があるかを調べます。通行量といっても、様々な要素が考えられます。例えば、同じ日でもランチの時間と夜の時間では通行量が違ってくるでしょうし、同じ週の各曜日でも違いが出てくるでしょう。さらに、その日が晴れなのか、雨なのかでも通行量に違いが出てくるはずです。このように、通行量を調べるといっても様々なパターンが考えられます。

通行量を調べるときには、曜日(平日、週末、休前日)、時間帯、天候がメインの調査項目となりますが、場合によっては調査する日がイベント開催日などの時には通常よりも通行量が多くなる可能性がありますので、注意が必要です。通行量に関しては、商店街などの場合、商工会議所がデータを公表している場合もありますので、こちらを参考にしてもいいかと思います。

⑤【現地】人々の動線の強弱を確認する

動線とは、一般的には人の動きの流れのことを言いますが、ここでは人が集まる施設間を結ぶ経路のこととして扱います。そして、動線の強弱とは、ターゲットとなる層の人が多く往来し、将来的な顧客となる人を獲得できる可能性が高い動線はどこかをいくつかのポイントをもとに、順位付けすることです。

評価の際に注目するポイントとしては、集客施設の規模(売上や売場面積など)、集客施設が複数ある場合には、駅から各施設までの動線の通行量と距離、各施設間の動線の通行量と距離を上げることができます。

実際に物件の候補がある場合には、動線からの見え方に着目することもできます。具体的には、どこから、何が、どのように見えるか(見えないか)を確かめます。

例えば、店舗の候補が2階にある場合には、店舗の窓に広告(看板)を出すことが考えられますが、それは歩道(通路)からなんの店かわかるように視認することができるのか、店舗1階に移動看板を設置した場合には、反対側の道路から視認することができるのかなどを確かめる必要があります。

このように評価するポイントは様々で、それぞの場合によって異なるかと思いますので、重視するポイントを考えてみてください。

⑥【現地】周辺に嫌悪施設がないかどうか

人の流れ(通行量)も大切ですが、周辺にどのような施設があるのかも人をひきつける場所かどうかを判断するうえで重要です。例えば、かなり味のいい料理を出す店でも、周辺に騒音や異臭発生源となる施設がある場合には、次回来店の可能性を大きく引き下げる要因になってしまう可能性があります。

また、歓楽街、ネオン街が近くにある場合には、ファミリー層にとっては家族そろって訪問しにくい場所という印象を与える可能性があります。その他にも、反社会的勢力の事務所や葬儀場、墓地、刑務所などは嫌悪施設として扱われるっことがあり、人々の足を遠のかせる可能性を秘めています。

また、施設だけでなく、夜間などにガラの悪い人が集まりやすい場所があるだけでもその周辺を忌避する要因となりますので、周辺にどのような場所があるのか、果たして安心してお客さんが訪問できる場所であるのかどうかを調べましょう。

物件評価のポイント

物件評価のポイント

リサーチ会社など、現地調査を専門に扱う会社の場合には、上記で調べた項目をデータ化して論理的な数値を算出するという方法をとることもありますが、一般的に自分でやろうとするのは現実的ではないでしょう。

調査結果から、以下に示すようなポイントを考慮したうえで判断することもできます。なお、b、cについては調査のポイントともかぶる内容のため詳細は省略します。

a) 出店しようとしている店舗は商圏タイプの特徴とマッチしているか

b) 店舗の前を人が通行する必然性は高いか(人々の動線から大きく離れていないか)

c) 店舗を容易に認識できるか(競合店よりも立地的に劣っていないか)

d) 一般の人が利用しやすいかどうか(店舗の間口を十分確保できるかどうかなど)

a) 出店しようとしている店舗は商圏タイプの特徴とマッチしているか

出店しようとしている店舗は商圏タイプの特徴とマッチしているかに

物件を見極めるポイントの一つとして商圏タイプを見極めることがあります。商圏タイプによって店舗で重視するポイントが変わってきます。ここでは代表的な3つの商圏タイプの特徴を紹介します。

①商業立地

大型の商業施設があり、1週間を通して多くの人が集まる場所のことです。この場所では、買い物や飲食などお金を使いに来ている人が多いので、高い売上を期待でき、客単価の高い業態が成り立ち易いでしょう。

一方で、競合店が多く、賃料や物件の競争率が高く物件の入手が困難でもあります。また、多くの店が立ち並んでいることが多いため、間口・看板を認知されやすくする必要があります。

②オフィス立地

文字通り、オフィスが集中しており、商業施設はほとんどないような場所です。この場所では、平日の人口密度が極端に高く、特に昼間などはよほどの事が無い限り集客には困りません。また、毎日同じ人が通ってくるので、常連やリピーターを狙うこともできますし、会社帰りに食事をして帰る人たちを狙うこともできます。

一方で、休日はほとんど人が集まらず、売り上げは期待できません。さらに、ランチタイムなどは、価格競争になる可能性が高く、回転率を上げないと多くの収益は期待できない可能性もあります。

③住宅立地

居住者が多く人口の流入がほとんどない場所です。この場所では、競合店が少なく、賃料が安めになっていることが強みになります。一方で、客層がほぼ近隣住人に限定されるため、高い収益を見込みにくいという難点もあります。

しかし、近隣住民のニーズにしっかりと会うような店舗であれば、それなりの収益は見込めるため、立地としては最高の場所となります。周辺へのポスティングなどもしやすく、地域密着型店舗を目指すのもいいかもしれません。

このように、商圏タイプによって出店する店に特徴がありますので、出店しようとしている場所はどのタイプなのかをきちんと考慮する必要があります。

さらに、店舗物件のタイプは、こちらの記事で解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。

d) 一般の人が利用しやすいかどうか(店舗の間口を十分確保できるかどうか)

一般の人が利用しやすいかどうか(店舗の間口を十分確保できるかどうか)

店舗を探す際には、利用者であるお客さんが利用しやすい、利用したいと思うような店舗を探す必要があります。そのためには、店を出す側の視点も大事ですが、利用する側の視点に立って考えることも大事です。利用者側の視点で見たときの利便性は次のようなものを挙げることができます。

・2階、地下階などの物件の場合、階段は利用しやすいかどうか、

・エレベーターはあるかどうか

・入口や看板は認識しやすいか、またきちんとなんの店か認識できるか

出店側さほど気にしていなくても、利用者側にとっては大事なポイントである可能性があります。例えば、歩道に面したビルなどの1階の物件が見つかったとします。面積も申し分なく、店内の雰囲気も外から確認しやすいおしゃれな雰囲気ですが、歩道から建物までの間にしっかりと足を上げないと登れないような段差があります。

この段差があることによって足が悪い人や、車いすの人、ベビーカーを押している人などは、入店するのが困難であり、断念する可能性もあります。また、ビルの2階や地下に条件のいい物件が見つかっても、階段しか店にたどり着く方法がない場合も同じように、来店してくれた可能性のあるお客さんを逃してしまっています。

さらに、お客さん目線だけでなく、従業員の視点も大事にする必要があります。従業員用の更衣室がない、休憩スペースがないなど給与以外にも従業員が働きたいと思う条件はいろいろあります。しっかりとした店舗運営を行うためにも、従業員にも配慮した形で物件探しをすることをおすすめします。

現地調査の豆知識

路面調査

競合店は意外と多い?

本筋とは直接関係ありませんが、知っておいて損はないポイントをご紹介します。

競合店は、同じ業態の店だけとは限りません。競合店を考える場合には、①メニュー、②価格、③利用時間・シチュエーションを考慮して考える必要があります。

例として、1杯800円のラーメン店を売りにした店をオープンさせようとしている場合を考えます。①~③の観点から、競合店を考えてみます。

①メニューの観点からすると競合となるのは同じラーメン店はもちろんですが、中華料理店もラーメンを提供している場合がありますし、ファミリーレストランのような業態でも提供している場合があります。

②価格の観点からいくと、同価格帯で食事系メニューを提供している店舗が競合店として考えられます。800円のランチメニューを提供している居酒屋や定食屋、うどん屋、蕎麦屋、カレー屋、イタリアンレストランなど様々な相手が考えられます。

③利用シチュエーションの観点で見ると、ラーメン店の利用シチュエーションとしては、ランチタイムなどそれほど時間をかけることなく食事を済ませる必要がある場合、ラーメンが食べたい場合が考えられます。

後者の場合、競合店は①メニューの観点から考えた競合店が挙げられますが、前者の場合は②価格の観点から考えた競合店のほかにも、ファストフード店やテイクアウトで食事を提供している店やコンビニなどの小売業も競合として考えられます。

このように考えると、ラーメン店の競合は近くにある同一時間に営業している飲食店となってしまします。ですので、競合店の調査をする際には、ある程度広い視野で確認していく必要があります。

さいごに

これまで、現地調査のことについて説明してきました。出店の際には、思ったよりも多くのことを考えて物件を決めなければならないと感じた人もいるかと思います。

実際にこれほどの事前準備をすることは大変ですので、デザイン事務所や設計会社など、専門の業者に調査を依頼いするのも一つの方法かと思います。

また、実際に調査を済ませ物件の内覧などに訪れ、気に入った物件があっても、一度冷静になって考えてください。その時の勢いも大事ですが、第三者の視点から意見を取り入れることも必要です。後悔しない店づくりのためにも妥協せずに頑張りましょう。

私たちTOでは物件探しのお手伝いも可能です。これから店舗の物件を探される方は、ぜひお気軽にご相談ください。店舗開業の最初期段階の、事業計画作成、物件選びから資金調達まで幅広く施主様をサポートいたします。

また、店舗物件の契約までの基本的な流れを徹底解説は、こちらの記事で解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。