グリストラップとは?飲食店の設置義務と基準についてわかりやすく解説します。

厨房器具 飲食店の店舗デザイン
飲食店の店舗デザイン

飲食店を開業や経営を行う上で、必ず考慮しなければならない問題が「油や汚染水の処理方法」。油や汚染水の染処理方法として、効果的であると言われるグリストラップですが、設置義務や設置基準を知らない方も多いのではないのでしょうか?

本記事では、グリストラップについての法令や設置基準について解説していきます。場合によっては、賠償金を請求される可能性があるため、飲食店の開業や経営をこれから行う方は事前に把握しておきましょう。

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グリストラップとは「油を含んだ水を分離させる装置」

グリストラップとは

グリストラップとは、飲食店から排出される油を含んだ水を分離させる装置です。3層構造になっており、以下の順序で構成されています。

  1. 残飯や生ごみの大きなゴミをバスケットで受け止める
  2. 仕切り板で水の勢いを止め、油と水を分離させる
  3. 分離させた水を下水道に排出する

グリストラップを使用した汚水処理を行うと、後ほど紹介する排水基準の違反になりません。また、「屋内床置き型」「屋内埋設型」「屋外埋設型」の3種類が存在し、それぞれのタイプによって設置費用や設置方法が異なります。

法律による明確なグリストラップの設置義務は無い

グリストラップの設置義務

結論から言うと、法律に飲食店のグリストラップの設置基準や設置義務はありません。しかし、これから紹介する2つの法令によって排水基準は定められています。

  • 建築基準法
  • 下水道法(水質汚濁防止法)

多くの飲食店は、上記の法令内にある排水基準を満たすために、グリストラップを設置している場合が多いです。それぞれの法令を詳しく見ていきましょう。

建築基準法

建築基準法第129条では、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる排水のための設備を設けると記載しています。また建築基準法内の「建設省告示第1597号」では、「汚水が油脂、ガソリン、土砂その他排水のための配管設備の機能を著しく妨げ、又は排水のための配管設備を損傷するおそれがある物を含む場合においては、有効な位置に阻集器を設ける」と記載されています。

数値などは明確にされていませんが、飲食店経営は配管設備を損傷する恐れがあるため、阻集器を設けた方が良いでしょう。

参照:建築基準法第129条建設省告示第1597号

下水道法(水質汚濁防止法)

下水道法と水質汚濁防止法では、排水の水質基準や店舗の床面積などが定められており、以下の基準となります。

  • 水素イオン濃度:5~9pH
  • BOD(生物化学的酸素要求量):1リットルあたり600mg未満
  • ノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂含有量):1リットルあたり30mg未満。
  • 飲食店の規模:床面積420㎡以上

上記の基準を満たしておかなければ、水質の改善や排水の停止の指導、罰則などがあるため排水基準については確認しておきましょう。

参照:下水道法水質汚濁防止法

グリストラップの設置基準は自治体の設置基準を確認する

グリストラップの設置基準は自治体の設置基準を確認

法律ではグリストラップの設置基準は明確にありませんでした。しかし、自治体によっては設置基準や設置義務が設けられている場合があります。例として、名古屋市では以下のように回答しています。

  • 「飲食店やガソリンスタンド等における汚水のように、油脂、ガソリン、土砂その他排水管を損傷する恐れのある物質を含む汚水を下水道に排水する場合は、建築基準法施行令により阻集器を設けなければならないとされています。」
  • 「名古屋市では設置するグリース阻集器の容量等に関する基準はありませんが、排水設備工事の申請に際しては阻集器の構造図と選定に係る容量算出書を添付していただき、確認を行っております。また、グリース阻集器の選定に関しては、空気調和・衛生工学会規格「グリース阻集器(SHASE-S217-2016)」を参考にすることができます。」

また「市民の健康と安全を確保する環境の保全に関する条例」でも水質汚染についての規定があるため、各自治体の設置基準を確認しておくと良いでしょう。

参照:名古屋市上下水道局の設置基準市民の健康と安全を確保する環境の保全に関する条例

グリストラップ設置のメリット

グリストラップとは

グリストラップを設置するメリットについて解説していきます。

  • 排水溝の消臭や害虫対策になる
  • グリストラップ設置店としてクリーンな印象を与える
  • 設置基準違反による賠償金請求を防ぐ

さまざまなメリットがありますが、大きく3種類の方法がグリストラップのメリットとして挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

排水の詰まり防止や害虫対策になる

グリストラップを設置しておくと、排水の消臭や害虫防止の効果があります。清掃を行っている前提ですが、グリストラップを設置していない場合よりもゴキブリやネズミなどの害虫の侵入を防いでくれます。また、悪臭の元となる残飯や生ごみなどをバスケットで受け止めるため、排水の詰まりなども防ぐのもメリットの1つです。

しかし、グリストラップを清掃していなければ、かなりの悪臭やハエ・ゴキブリなどの害虫が発生するため注意しましょう。

グリストラップ設置店としてクリーンな印象を与える

グリストラップ設置義務は自治体によって定められていますが、社会にクリーンな印象を与えるメリットがあります。飲食店経営時には、利益向上について考えるのも必要です。それと同時に、社会や環境への影響も考慮する必要があります。

また、グリストラップ設置により、衛生面や環境面に貢献できるため、多くの方々に良い印象を持ってもらえるでしょう。もし、自治体の設置義務がない場合でも、積極的なグリストラップ設置によるメリットは大きいです。

設置基準違反による賠償金請求を防ぐ

グリストラップの設置基準に関しては、建築基準法や自治体の基準によって定められています。もし、設置基準や設置義務の条件を満たしていなければ、水質の改善や排水の停止などを命じられます。最悪の場合、賠償金を請求される可能性があります。

グリストラップの構造にもよりますが、飲食店開業時に設置しておくと損害賠償を防げます。設置前に開業する地域の自治体に確認してから、グリストラップの設置を行いましょう。

グリストラップ設置のデメリット

グリストラップ設置のデメリット

グリストラップ設置には多くのメリットがありましたが、中にはデメリットもあります。

  • 本体や設置費用がかかる
  • 清掃や管理のコストがかかる

上記の2種類のように、グラストラップ設置を行うと費用やコストがかかります。設置前に、それぞれ詳しく確認しておきましょう。

本体や設置費用がかかる

グリストラップを設置する際、本体購入費用や設置費用がかかります。本体価格はサイズやタイプにもよりますが、約5万~20万円します。高いものでは設置込みで80万~120万円するグリストラップもあるため、開業する飲食店に適したタイプを検討しましょう。また、設置には排水設備指定工事店に依頼する必要があります。飲食店開業時には、グリストラップに必要な資金計画を事前に立てておきましょう。

清掃や管理のコストがかかる

グリストラップを設置すると、清掃や管理のコストがかかります。グリストラップは、多くのゴミや油を取り除くため、きれいな水を排水してくれます。しかし、こまめな清掃を怠るとバスケットやグリストラップ本体に汚れが溜まり、飲食店経営の衛生面に良くありません。

そのため、グリストラップ内の清掃や管理を行う必要があります。もし、清掃や管理を自分でしたくない場合は、グリストラップ専門の清掃業者にお願いしましょう。費用はかかるものの、清掃コストを削減でき、質の高い清掃や管理を提供してくれます。

グリストラップの清掃基準

グリストラップの清掃基準

グリストラップの清掃基準は、設置基準と同じく自治体によって異なる場合があります。清掃時の頻度や点検日数などが定められている場合が多いです。例として、名古屋市では以下のように定められています。

  • 清掃回数:1回/6ヶ月以内
  • 点検回数:1回/7日以内
  • 点検内容:浮遊物量・沈殿物量の状況・つまりの状況・壁面などの損傷・漏水の有無

自治体によっては、上記のように点検内容なども定められている場合が多いです。飲食店を開業する自治体の定めている清掃基準に基づきましょう。詳しく知りたい方は、下記のリンクからご参照ください。

参照:名古屋市|排水管理

グリストラップの清掃時のポイント

グリストラップ掃除

グリストラップの清掃のポイントは、こまめに清掃すると良いでしょう。生ごみや油汚れを長期間放置していると、汚れが落ちにくくなり悪臭も強くなります。清掃を簡単にするために、「グリストラップ用の水切りネット」や「グリースクリーン」などの活用をおすすめします。市販でも売っているため、誰でも購入しやすいです。それでもグリストラップの清掃ができない場合は、グリストラップ専門の清掃業者に依頼しましょう。

自治体の設置基準を確認してグリストラップを設置しよう

自治体の設置基準を確認してグリストラップを設置しよう

飲食店の開業時にグリストラップを設置する際は、開業地域の自治体に事前確認を行いましょう。設置基準や清掃頻度などが地域によって異なるため、確認を行い早めの設置費用計画作成をおすすめします。

本記事では、グリストラップの設置義務や設置基準について解説しました。グリストラップを設置して、店舗の衛生的にも地域の環境にもやさしい、クリーンな飲食店開業を目指しましょう。

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