【飲食店版】店舗の開業に必要な資金・費用の調達方法や手続きの流れを解説します。

店舗デザインの相談 店舗独立開業のポイント
店舗独立開業のポイント

「自分で店を持ちたい」と思って修業を積んできた人、開業するための資金をコツコツためてきた人、一発逆転を狙って開業をしたい人、事業展開の一環として飲食店を始めたい人など、飲食店を開業する人の事情は様々あるかと思います。

その中でもやはり一番の問題となるのが資金面になるかと思います。今回は、事業を始めるにはどれくらいの資金が必要になるのか、自己資金だけではまかなえない場合はどこから資金を調達すればいいのかを紹介していきます。

また、2021年コロナ禍での店舗改装リニューアルや新規出店の記事やコラムはこちらでまとめています。こちらも合わせてご参照ください。

飲食店の開業資金はいくら必要?

開業資金はいくら必要?

結論からお伝えすると、一般的には①「最低でも1,000万円前後」もしくは、②「100万×店舗の敷地面積」が必要になるといわれています。

①の開業資金1,000万の平均的な内訳は、借り入れが850万前後で、自己資金が300万前後になっていることが多いとされています。そのため、自己資金で300万円程度準備できれば、開業のための準備に取り掛かる人が多いようです。しかし、1,000万という額は最低でもという額であり、店舗の面積や業態によっても変わってきます。

そこで目安となるのが②「100万×店舗の敷地面積」です。あくまで目安での金額となるため、心配が残るという人は、この額にいくらか追加して保有していたほうがいいかと思います。では、この開業資金はどのような内訳になっているのか簡単に見ていきます。

①店舗不動産準備費用

店舗不動産準備費用

飲食店開業のためには、まず営業する場所が必要です。その場所を確保するための費用と考えていただいて問題ありません。実際に、物件を借りる(買う)場合には、敷金、礼金、仲介手数料、前払いの家賃(物件により異なる)、保険料などが必要になります。

その他、居抜き物件を使用する場合には、前の持ち主(前賃借人)に対して造作譲渡料を支払う必要がある場合もあります。居抜きの場合には、基本的に自分で譲ってくれる人を見つけ、オーナーや管理会社の承認を得るという流れになっていることもあります。

②店舗設備費用

店舗設備費用

確保した店舗を営業できる状態にするための費用のことを指し、内装工事費用や厨房機器や食材の準備費用のことです。外装(看板や界壁など)や内装(クロスや照明など)自分の店をどのようにしたいかは、ある程度自由に決めることができます。

しかしあまりに凝りすぎると工事費用が高くなってしまうことも考えられるため、あらかじめ予算を決めたうえで、その範囲でできることを行うなど工夫が必要です。また、厨房機器についても、リースの場合や、中古でそろえるなど様々な方法がありますので、費用を抑えることもできます。

③運転資金

運転資金

開業後、数か月の間の店舗運営で必要となる費用です。具体的には、数か月分の家賃やお店の宣伝費用、光熱費、食材の仕入れ費用など店舗を運営していくうえで必要になる費用は確保しておく必要があります。

また、従業員を雇っている場合には、その人たちに払う賃金や、求人を出している場合には、その費用など、その他にも必要となる費用はありますので、月に何がどれくらいかかるのかをあらかじめ想定しておく必要があるかもしれません。

一般的な話ではありますが、店をオープンさせて軌道に乗るまでは半年以上かかると言われており、日本政策金融公庫の調べによると約6割以上の店舗が軌道に乗るまでに半年以上かかっています。このことを考慮すると、運転資金としては、3-4か月分は確保しておく必要があります。融資で確保できる運転資金は約2-3か月分ですので、自己資金で2-3か月分の運転資金を確保する必要があります。

坪単価や施工費など店舗設計の費用区分に関しましてはこちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひこちらもご参照ください。

店舗資金の調達方法

先ほども少し触れましたが、開業資金の半分以上は借り入れなどによる調達をしている場合がほとんどです。では、どのような方法で資金を調達しているのでしょうか。どのような方法があるのか具体的にみていきましょう。

①親族からの資金調達

親族からの資金調達

親族や血縁者からお金を借りる方法です。意外と一番多い手段で、一番トラブルになりやすい方法でもありますので、返済計画はきちんと立てましょう。また、親族からの資金調達は「資産」という扱いになり、「自己資金」として扱える場合があります。その場合、自己資金が多いため後述の日本政策金融公庫の融資審査に通過しやすくなります。

②常連様や知人からの資金調達

常連様や知人からの資金調達

古くから付き合いのある常連のお客様が出資してくれるというのは飲食業界では珍しい話ではありません。また、出資(=返済義務のないお金)は融資の審査の際に「自己資金」という扱いになり、審査に通りやすくなるため、融資の審査を受ける時だけ出資してもらい、審査を通過した後で、出資金を返済するといった方法をとる人もいます。

当然、せっかく融資したのにうまくいかず倒産してしまう事態になれば、融資金の回収ができなくなります。そのため、親族以外からの融資の場合には、厳しいチェックが入ります。返済できなくなる可能性が高い人に融資するリスクを犯すわけにはいきませんから、当然のことです。

③民間の金融機関からの資金調達(融資)

民間の金融機関からの資金調達(融資)

某ドラマでも登場しましたが、融資という言葉を聞けば銀行を思い浮かべる人が多いと思います。融資を受ける際に気を付けるべきなのが、小口融資が可能かどうかです。信用金庫や信用組合は小口融資に特化していますが、都市銀行や地方銀行に比べると金利が高いことが多いです。

また、信用金庫や信用組合の場合は、高額の借り入れができない場合もありますので、自身の将来設計などを考慮した上でどちらで融資を受けるか決めてください。

ここで覚えておきたいことが、民間の金融機関からの融資は、かなりの時間がかかることです。申請から結果が出るまで2か月以上かかることが多く、飲食店の場合には、営業許可証が交付されていることが条件の一つであるため、店舗の工事費用などに使用するには、厳しいかもしれません。

④日本政策金融公庫からの資金調達(融資制度)

日本政策金融公庫からの資金調達(融資制度)

画像出典:日本政策金融公庫

なかなか資金調達がうまくいかないといった場合には、日本政策金融公庫から融資を受けるの人が多いです。「中小企業経営協力化資金」や「新創業融資制度」という2つの制度を利用するパターンです。特に、「中小企業経営協力化資金」中小企業向けの投資制度になっており、「新創業融資制度」よりも、1%金利が低いため、大金を長期的に返済することを考えた場合には、かなりのメリットになります。

また、認定経営革新等支援機関の専門家に代行をお願いして、自身は開業準備に専念することができたり、融資の面談に専門家を同席させることができたり、担保・保証人が不要出会ったりと、個人で飲食代を開業させようとしている人にはかなりおすすめの制度です。

⑤補助金・助成金の活用

補助金・助成金の活用

助成金・補助金の最大の利点は、返済しなくて良いという点にあります。そもそも補助金とは、主に地域の活性化に貢献している事業者にサポートされるもので、審査に通過すると交付されるお金です。飲食店の場合には、「特定求職者雇用開発助成金」や「トライアル雇用奨励金」「キャリアアップ助成金」などがあり、各自治体ごとに個別の助成金を用意していることもあります。

また、助成金とは、社会貢献のための事業を行っている人のサポートを行うためのもので、労働環境の改善や就労を促すためのサポートを行っているような事業者に交付されています。飲食店の場合、「IT導入補助金」「創業・事業承継補助金」「小規模事業者持続化補助金」などが利用できます。

補助金や助成金は、飲食店向けのものも多く、地域によってはかなり大きな金額をサポートしてくれることもありますので、調べてみるのがおすすめです。「創業補助金」や「キャリアアップ助成金」はよく利用されている制度で、飲食店が特に優遇されている助成金ですが、開業後1年以上経過していることなどが条件となっていますので、申請する場合には、条件をしっかりと確認してください。

店舗の開業・改装・運営に関する補助金の取得補助を行っております。開業・リニューアルの際には、補助金の申請から建物の完成、受給までを一貫してサポートいたします。補助金取得の流れや過去の採択事例に関してはこちらのページをご参照ください。

⑥クラウドファンディングによる資金調達

クラウドファンディングによる資金調達

コロナ禍になって徐々に知名度が上がってきたクラウドファンディングで、資金を調達することも考えられますが、希望の金額に届くかどうかははっきり言って博打的な要素が強い印象です。

様々なクラウドファンディングのサイトがありますので、それぞれのサイトの特長を精査したうえで、有効なサイトを利用しましょう。また、出資を検討してくれる人への熱意が伝わるように努力することも大切です。

まとめ

融資を受けるために親族からお金を調達

いかがでしたでしょうか。融資を受けるために親族からお金を調達したり、自分の熱意を存分に伝えて、投資してくれる人を探したり、様々な方法があったと思います。

実際にどのような方法をとるのが正解であるということはありませんので、しっかりと計画を立ててみてください。店舗開業時の行政手続きはこちらのカテゴリーで詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。