お店の内装工事の節税ポイントである減価償却について詳しく知りたいと思っているオーナーの方は、多いのではないでしょうか。減価償却を知らないと損をしてしまったり、赤字で店舗を閉店しないといけないことに繋がる可能性があります。
そこでこの記事では、店舗の内装工事をおこなう際に知っておくべき減価償却について解説していきます。
また、こちらの記事では内装工事の各勘定科目について、詳しく解説しています。こちらも合わせてご参照下さい。
内装工事の減価償却とは
減価償却は、固定資産(資産の勘定科目)を使用期間(国税庁が定める期間)に応じ、数年かけて経費計上することです。
店舗の内装工事を行った際の工事費や設備などの費用は、高額なため、費用ではなく固定資産(勘定科目:建物or建物附属設備)として計上されます。
さらに、確定申告の際、高額な固定資産は購入年度に全額を経費として計上できません。そのため、それらの固定資産を耐用年数で按分しながら経費として計上します。これを減価償却といいいます。
減価償却は申告者側のメリットも大きい仕組みです。後ほど詳しく解説しますが、複数年で分割して経費として毎年計上していくと、毎年の利益分から経費として控除できるため、納税を少なくすることができます。
ただし、減価償却の仕組みは内装工事の種類、法人、個人により要件が異なります。内装工事費用は決して安くないため、不安な方は関係機関や税理士に相談しながら進めましょう。
減価償却資産とは
建物、建物附属設備、機械機器、備品など、時間がたつに連れてそのモノの価値が減少する資産のことを「減価償却資産」と呼びます。また、減価償却を計上するときに使う勘定科目は「減価償却費」となります。
減価償却の例
上記のように減価償却を用いて、設備工事で発生する費用を、工事をおこなった年に一括で経費として計上せず、国税庁が定めている設備や建物の耐用年数に応じて、分割して経費計上します。
内装工事の勘定科目の仕訳方法
まず最初に、内装工事の勘定科目の仕分けについて解説します。内装工事の勘定科目は主に「建物」「建物付帯設備」「諸経費」「備品」に仕分けます。この内、減価償却の対象となるものは「建物」「建物付帯設備」の2つの勘定科目(資産)です。
建物
- 木工工事
- 造作工事
- ガラス工事
- 防水工事 など
建物に分類される内装工事は、店舗を開業するにあたり建物に直接施される工事になります。建物付帯設備と混ざらないようにするには、建物付帯設備から仕訳することがポイントです。
建物付帯設備
- 電気設備
- 給排水設備
- 衛生設備
- ガス設備
- 冷暖房設備
- 通風設備
- ボイラー設備
- 災害報知設備
- 避難設備など
建物付帯設備は、文字通り建物に後付けする設備のことです。設備工事のほとんどは、故障の修理や新品を購入した際の取替工事がメインになります。建物付帯設備は、数多くの内装工事が当てはまるため、漏れがないようにしましょう。
備品
- 机
- 椅子
- 什器
- 消耗品 など
家具や、消耗品、壁に後付けしたものなど作り付けではないもの、その他消耗品関係で20万円以上するものを備品として計上します。10万円以上20万円未満のものは「備品」ではなく「一括償却資産」で計上することになります。ただし、20万円以下の備品購入費を統合して「備品」として計上することが可能です。
諸経費
内装工事の際に発生する設計費用や人件費は諸経費として経費計上します。ただし、店舗デザイン設計費用など高額になるものは、確定申告の際に認められないため、経費ではなく「建物」として資産の取得費用として計上します。
内装工事の減価償却の方法
内装工事の減価償却の対象
内装工事の減価償却の対象は「建物」と「建物附属設備」です。仕分けの際は、ややこしく、耐用年数もまちまちな建物附属設備から仕分けるのがおすすめです。建物附属設備に当てはまらないものを、「建物」として仕分けするとスムーズです。
定額法と定率法
減価償却の方法でよく使用されるのは「定額法」と「定率法」です。どちらの方法を使用するかは、「減価償却資産の償却方法の届出書」を確定申告前までに提出しましょう。ただし、内装工事費用の勘定科目となる「建物」と「建物附属設備」はどちらも定額法のみが認められて言います。※一部の事業者を除く
定額法 | 毎年同額を減価償却として経費計上する方法です。
計算方法:取得原価×償却率 |
定率法 | 減価償却をおこなう初年度が一番高い経費計上となり、 年々計上する額が減っていく方法です。計算方法:(取得価額-前年度までの償却費の総額)×償却率 |
直接法と間接法
減価償却にはさらに直接法と間接法が存在します。実際にそれぞれの仕訳方法は下記のとおりです。
直接法での内装工事費の減価償却の仕分け
直接法では、固定資産(今回の場合は建物)から減価償却費を直接差し引く形にします。そのため、借方に減価償却費、貸方に固定資産勘定(建物)を記入します。
例)期首に飲食店の木造造作工事(耐用年数20年)を行った場合(工事費用:100万円、償却方法:定額法、耐用年数20年、減価償却費5万円)
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 50,000円 | 建物 | 50,000円 |
間接法での内装工事費の減価償却の仕分け
間接法では固定資産を直接償却するのではなく、減価償却累計額として計上して、これまでの償却額の合計を記載する方法です。借方に減価償却費、貸方に減価償却累計額累計を記入します。
例)期首に飲食店の木造造作工事(耐用年数20年)を行った場合(工事費用:100万円、償却方法:定額法、耐用年数20年、減価償却費5万円)
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 50,000円 | 減価償却累計額 | 50,000円 |
内装工事の耐用年数の確認
内装工事の減価償却をおこなう際、勘定科目の仕訳をおこなうと同時に重要なのが、内装工事それぞれの耐用年数を確認することです。耐用年数に沿って減価償却をおこなうため必ず抑えておきましょう。勘定科目が建物に仕訳される耐用年数の例は以下の通りです。
木造・合成樹脂造
店舗・住宅用 | 耐用年数22年 |
飲食店用 | 耐用年数20年 |
事務所用 | 耐用年数24年 |
木骨モルタル造
店舗・住宅用 | 耐用年数20年 |
飲食店用 | 耐用年数19年 |
事務所用 | 耐用年数22年 |
鉄骨・鉄筋コンクリート造
店舗・住宅用 | 耐用年数39年 |
飲食店用 | 耐用年数41年(木造内装が30%を超えている場合は耐用年数34年) |
事務所用 | 耐用年50年 |
勘定科目が建物付帯設備に仕訳される耐用年数の例は以下の通りです。
店舗簡易設備 | 耐用年数3年 |
蓄電池電源設備 | 耐用年数6年 |
給排水設備 | 耐用年数15年 |
衛生設備 | 耐用年数15年 |
ガス設備 | 耐用年数15年 |
店舗内装用の器具・備品類の耐用年数の例は以下の通りです。
冷凍機や冷蔵機付の陳列棚、陳列ケース | 耐用年数6年 |
なにも付かない陳列棚、陳列ケース | 耐用年数8年 |
冷房用・暖房用機器 | 耐用年数6年 |
電気冷蔵庫、電気洗濯機、その他電気、ガス機器類 | 耐用年数6年 |
氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー | 耐用年数4年 |
パソコン | 耐用年数4年 |
レジスター、タイムレコーダー | 耐用年数5年 |
音響機器 | 耐用年数5年 |
参照:国税庁ホームページ
建物と建物付帯設備の他にも店舗運営に必要な冷蔵・冷凍庫、パソコン、レジも減価償却に含まれるため、耐用年数を必ずチェックしておきましょう。
内装工事の減価償却のメリット
①法人税の節税に繋がる
減価償却費を経費として毎年計上していくと、毎年の利益分から経費として控除できるため、法人税の納税を少なくすることができます。また「少額減価償却資産」と「一括償却資産」を上手く活用することで、より法人税の納税を抑えることができます。必ずチェックしておきましょう。
少額減価償却資産
少額減価償却資産として経費計上できるのは「取得金額が10万円未満」かつ「耐用年数が1年未満」のモノです。2つの条件を満たしたモノは、固定資産のモノでも一括で経費として計上できます。利益を抑えることができ、法人税の節税に繋がります。
一括償却資産
取得金額が10万円以上20万円未満の固定資産を、3年間で3分の1ずつ経費として計上するのが一括償却資産です。大きな金額を経費として利益から控除することができるため、法人税を大きく抑えることができます。
②財務状況をよく見せられる
初年度の赤字を防ぐことができるのも減価償却の大きなメリットです。大きな額を一括で経費計上しなくて済むため、利益を出すのが難しい初年度の赤字回避に繋がります。また、設備投資など大きな出費があった年も一括で経費計上しなくてすむため決算時に利益を残すことができます。
まとめ
この記事では、店舗の内装工事をおこなう際に知っておくべき減価償却について解説してきました。減価償却は規定が細かく調べると頭が痛くなりますが、適切に活用すると法人税を抑えることができます。上記の重要ポイントを抑えて内装工事の節税を必ずおこないましょう。
株式会社TO(ティーオー)は、店舗デザインを得意とするデザイン事務所です。お客様にとって「心地よい空間とはなにか」という問いに対して真摯に向き合い、お客様に最適なプランニングをしております。
店舗開業時の行政手続きはこちらのカテゴリーで詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。