このように、飲食店を開業・運営するにあたり、ユニバーサルデザインを導入すべきか悩んでいる、オーナーの方は多いのではないでしょうか。
近年、注目されているユニバーサルデザインは、飲食店への導入が必須ではありません。しかし、幅広いターゲット層を狙っていくのであれば、ユニバーサルデザインを導入すべきでしょう。
また、飲食店のユニバーサルデザインの導入は、他の店舗との差別化を図るには最適です。そこで、この記事では、ユニバーサルデザインの基礎知識から飲食店で導入する際のポイントを解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
また、こちらの記事では店舗デザインの基礎知識に関して解説しております。ユニバーサルデザイン以前に店舗デザインに関しての知識自身がない方はこちらの記事も合わせてご参照下さい。
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインを簡単にいうと、「誰にでもわかりやすく誰でも使用できるデザイン」を施すことです。年齢や国籍、障害、性別などに関係なく、誰にでもわかりやすく使いやすいデザインということですね。
また、ユニバーサルデザインは、バリアフリーと混同されがちです。この機会に違いを覚えておきましょう。以下にユニバーサルデザインとバリアフリーの違いを簡単にまとめます。
- ユニバーサルデザイン→誰にでもわかりやすく誰でも使用できるデザイン
- バリアフリー→あらゆる障壁となるものを取り除く
バリアフリーは、基本的に障害のある方や高齢者の障害となるものを取り除くさいに使用されます。一方で、ユニバーサルデザインは、障害の有無や高齢者に限定されず、幅広い人を対象としたデザインになります。
ユニバーサルデザインの7原則
ユニバーサルデザインの基本となっている7原則が以下です。
- 誰でも利用できる(公平性:Equitable use)
- 使い方を選べる(柔軟性:Flexibility in use)
- 簡単ですぐに使用できる(単純性:Simple and intuitive)
- 情報がすぐに分かる(認知性:Perceptible information)
- ミスや危険を防ぐ(安全性:Tolerance for error)
- 無理しなくても使用できる(身体への負担の軽減:Low physical effort)
- 利用しやすい広さや大きさ(空間性:Size and space for approach and use)
参照:UD資料館(https://www.ud-web.info/how_7rule)
上記の7原則に基づいて、ユニバーサルデザインは店舗デザインの設計のさいに導入されます。たとえば、「誰でも利用できる」で簡単な例を挙げると、外国人の方でも注文ができるように英語や中国語、スペイン語などのメニュー表を用意するになります。
ユニバーサルデザインの店舗デザインのポイント
飲食店で導入するユニバーサルデザインのポイントを場所ごとに解説していきます。以下の内容を抑えることで、誰もが快適に過ごせる空間を作ることができるでしょう。
出入口のユニバーサルデザイン
飲食店の出入口で意識すべきポイントは以下です。
- 出入口の広さ(車いすやベビーカーが通れる)
- 自動ドアまたは引き戸
- 出入口の前に段差がないか
- わかりやすい出入口か
飲食店の出入口には、上記のポイントを抑えたユニバーサルデザインを導入すればいいでしょう。車いすの幅は、大きくても70cm以下のため、75cm以上の幅を出入口で確保する必要があります。
また、車いすの方や高齢者の方でも入店しやすいように、引くタイプのドアを避け、自動ドアまたは引き戸にするといいでしょう。出入口の前に段差がある場合は、スロープなどを活用してみてください。
通路のユニバーサルデザイン
飲食店の通路で意識すべきポイントは以下です。
- 広い通路幅の確保(車いすやベビーカーが通れる)
- 段差の排除
- 通行のさまたげとなる家具やインテリアの排除
- 滑りにくい
店内の通路も出入口と同様に車いすやベビーカーが通れる幅を確保しましょう。段差ができそうな場合は、スロープやゴムのクッション材などを使用して対処してみてください。
また、家具やインテリアはできるだけ通路に置かないようにし、ケガの危険があるものや通行のさまたげとなるものを取り除きましょう。ゆとりのある空間の作り方に関してはこちらの記事で詳しく解説しております。こちらの記事もあわせてご覧ください。
階段のユニバーサルデザイン
飲食店の階段で意識すべきポイントは以下です。
- 手すりの設置
- クッション性のある素材の使用
- 滑りにくい素材の使用
- 耐久性のある素材の使用
飲食店には、階段などの段差はない方がいいです。しかし、階段が備え付けてある物件を使用することもあるでしょう。階段がある場合は、手すりを設置し年配の方でも不自由なく登れる配慮が必要です。
また、クッション性や耐久性があり、滑りにくい素材を階段に使用し、未然にケガを防ぐことが重要です。費用はかかってしまいますが、小型のエレベーターの設置も検討してみるといいでしょう。
お手洗いのユニバーサルデザイン
飲食店のお手洗いで意識すべきポイントは以下です。
- 多機能トイレ
- センサーの導入
- お手洗い場所への誘導看板
車いすの方やお子さんがいるベビーカー利用者でも使用できる多機能トイレは、飲食店のユニバーサルデザインに最適です。基本的に多機能トイレは、広い空間の確保、オストメイトの方が利用できる設備、高齢者が不自由なく利用できる手すりの設置など、さまざまな機能が備わっています。
特に、センサーを導入した便座や洗面台、ハンドドライヤーは、誰でも不自由なく使用できるかつ衛生面に優れているため、導入必須のユニバーサルデザインでしょう。
トイレは店舗デザインでも特に重要です。飲食店の設計をお考えの方はこちらの記事で詳しく解説しております。ぜひコチラもご参照下さい。
客席のユニバーサルデザイン
飲食店の客席で意識すべきポイントは以下です。
- 客席同士の適切な幅(車いすやベビーカーが通れるか)
- 車いすが入れるテーブルの高さ
- 移動できるイス
- テーブルやイスの角が丸みを帯びているか
車いすが入れるように、高さ調節ができるテーブルもしくは車いすが入れる高さに、テーブルを合わせておきましょう。イスは、固定式のモノを選んでしまうと、車いすの方や小さな子どもが来店されたさいに移動ができません。
できるだけ可動式のイスにして、臨機応変に対応できるようにしましょう。また、ケガを防止する観点から、テーブルやイスは、角が丸みを帯びているものを採用するといいでしょう。尖っている場合は、スポンジやゴムなどを角に貼り付けて対処してみてください。
まとめ
この記事では、ユニバーサルデザインの基礎知識から飲食店で導入するさいのポイントを解説してきました。
株式会社TO(ティーオー)は、店舗設計を得意とするデザイン事務所です。お客様にとって「心地よい空間とはなにか」という問いに対して真摯に向き合い、お客様に最適なプランニングをしております。
弊社TOではこれまで蓄積したノウハウから、お客様に最適な改装プランの提案が可能です。「ユニバーサルデザインをどう導入すればいいか分からない」といった方もぜひ一度我々にご相談ください。
ユニバーサルデザインを飲食店に導入しようと思うと終わりがないため、費用がかさみすぎてしまう場合があります。上記のポイントを抑えて、必要な場所に必要なモノだけの設置を心がけましょう。