店舗の空間デザインを考える際に、店舗内の雰囲気づくりや、店舗の環境づくりには欠かせない壁。店舗の機能や目的に応じた壁紙・壁材選びを行うためには、素材や色などの特徴を抑える必要があります。本記事では、空間デザインの要となる店舗の「壁紙・壁材」の選び方やコツを徹底解説いたします。
店舗の壁の役割
店舗における壁紙・壁材の役割は店舗空間の印象を決めること、室内環境を快適に保つことの二つに大別できます。
店舗空間の印象を決める
店舗デザインを行う際に、まずは商品や立地に合った店舗のコンセプトを決めます。具体的には店舗設計事務所との話し合いにより、経営理念や流行などを踏まえたコンセプトを設定し、店舗全体の色やインテリアを設計していくという流れになります。
その中で壁材・壁紙は、視界に入る割合が多いため、店舗のコンセプト・空間の印象を決める役割を大きく担うこととなります。
店舗の室内環境を快適に保つ
店舗内の匂いや湿気を考慮する際、どうしても空調設備や清掃、芳香剤に関心を寄せてしまいがちですが、店舗の壁材・壁紙にどのようなものを選ぶかということもとても重要です。
店舗の壁材・壁紙は調湿機能や汚れ防止の役割を担っているからです。壁材や壁紙によっては店舗内で生じた匂いや汚れを吸収してしまい、掃除しても取り除くことができない事態が生じてしまうことがあります。
反面、汚れ・傷防止や消臭効果をもつ壁紙などもありますので、店舗の形態に応じて適切な壁紙を選ぶことによって、室内環境を適切に保てるようにしましょう。
店舗の壁紙・壁材の種類
店舗の壁紙・壁材の種類は一般的にクロス、塗り壁、木質材、タイル、コンクリートの5つに大別されます。それぞれに関して詳しく解説いたします。ほかにも壁面材はありますが、今回はこの5種類についてご説明しますね(左官、石張り、造形、etc.)
クロス
クロスとはクロース(布)という意味です。昔は布を壁に貼って仕上げていましたが、今ではビニールや紙などを用いることが多く、壁に貼る仕上げ材全般のことをクロスということが一般的となりました。
ほかの材に比べて、安価で取り換えが容易なのが特徴的で、消臭や傷防止などの高機能なものも近年開発されてます。ここでは、ビニールクロス、紙クロス、織物クロス3つの素材についてその特徴を解説いたします。
ビニールクロス
ビニールクロスはクロスの中でも比較的安価で機能性に優れていることが特徴的です。工業生産されているものが多くその種類も様々ですのでとても汎用性が高いです。
しかし、比較的劣化しやすいという特徴も有しており、長期的に考えると張り替えが必要となります。種類にもよりますが、チープな印象を与えてしまう恐れがあるため、高級感を演出したい場合はその他クロスや壁材を用いることを推奨します。
紙クロス
紙クロスは古来から日本で用いられてきた和紙などを壁に設えたものです。和紙を用いることにより、特有の趣深い印象を空間に演出することが可能となります。吸湿・消臭効果が期待できますが、水や油に弱い特性を持つため、普段の利用だけでなく、清掃などの際にも注意が必要です。
織物クロス
織物とは縦糸と横糸を縫い合わせた日本古来の布のことです。織物をクロスとして用いると、高級感のある仕上がりを演出することが可能となり、日本食店やホテルのロビーなどで用いられます。
織物クロスは布であるため、汚れが落ちにくく可燃性を持つため、飲食店などのキッチン付近では使用されません。その他クロスと比べて比較的高価であることも特徴です。
塗り壁
次は塗り壁について解説します。壁に材を塗り付けるもの、漆喰や土壁など日本古来から用いられてきました。無機質なクロスなどと比較すると、質感が生じ温かみのある印象を持つことが特徴です。ここでは、漆喰壁と珪藻土壁についてご説明いたします。
漆喰壁(しっくい)
漆喰壁は伝統的な家屋や蔵で用いられていることが多く、誰もが一度はお目にかかったことのある壁材かと思います。白を基調としたものが一般的ですが、黒などの色入りのものもあります。
耐火性、調湿性に優れているという特徴をもつため、飲食店やバーなど、幅広い店舗で用いることが可能です。一方で、施工の際にはひび割れが生じやすいというデメリットもあります。そのため、漆喰壁を施工する際には、信頼でき、腕の立つ大工・施工業者に依頼することを推奨します。
珪藻土壁(けいそうど)
珪藻土とは、植物性プランクトン(藻)の化石から形成される自然素材の壁材です。小さな孔が多く空いているため、漆喰壁と比較しても吸湿性が優れています。
バスマットやコースターなどで人気を博している通り、優れた脱臭効果・耐火性を有していることが特徴です。土壁に関してはこちらの記事でより詳しく解説しております。こちらも合わせてご参照下さい。
木質材
3つめは木質材です。木質材はその名の通り木を用いているため、特有の温かみや自然の調湿効果が期待できます。コンクリート構造のテナントが多い中で、内装を木で仕上げると、無機物と有機物のコントラストによってメリハリのある空間を演出することが可能となります。ここでは、無垢材と合板材についてご説明いたします。
無垢材
無垢材とは、気を切り出したままの壁材であり、自然な木の風合いを演出することが可能です。木の持っている温かみだけでなく、形状や風化による重工感を演出することができることが強みです。しかし、自然素材をそのまま利用するには品質の良いものを使用する必要があるため、比較的高価なものが多いです。
合板材
合板材とは、べニア板を繊維が互い違いになるように重ね合わせた板のことを言います。調湿性に優れ、加工が容易るため使い勝手が良いことが特徴です。
無垢材と比較して安価な壁材となっているため低価格で木のぬくもりを演出することが可能となります。内装に使われる木材に関してはこちらの記事で詳しく解説しております。こちらも合わせてご参照下さい。
タイル
タイル張りの壁材は、耐火性・耐久性共に高く、キッチンなどに用いられることが多いです。目地とタイルの個性的なデザインを一つのアクセントとして取り入れるなどの工夫を凝らすことも可能です。欠点は、目地に汚れやカビが生じてしまい、掃除が困難であることや、ひび割れなどの可能性があることです。
コンクリート
スタイリッシュな雰囲気が人気のコンクリート。コンクリートは防火性に優れ、火災保険料が安くなるのも魅力です。広々とした雰囲気のある世界観が作れる一方で、デメリットもあります。
まずは吸水性が無く、カビが生えやすい点です。これは、飲食店にとって見過ごせないポイントではないでしょうか。また、夏は暑く冬は寒いので、空調のコストが高くなるのも懸念材料といえるでしょう。コンクリートを取り入れる際は、こまめな手入れが必要となります。
店舗の壁紙・壁材選びのコツ
これまで、壁紙・壁材の役割、及び壁紙・壁材の種類をご紹介いたしました。最後に、店舗の壁紙・壁材選びのコツ・重要なことをご紹介いたします。
コンセプトに沿った壁紙・壁材を選ぶ
最初に述べた通り、壁紙・壁材は店舗空間の印象を決める大きな役割をもちます。そのため、お客様がいらっしゃる際にも壁が与える印象がお客様にとってお店の第一印象となります。
お店のコンセプトをしっかりと伝えるためにも、その壁材・壁紙がインテリアや床天井とマッチし、コンセプトに合っているかどうかを重視しましょう。
なお、コンセプトがまだ決まっていない方はコチラの記事でコンセプトの決め方に関して詳しく解説しております。こちらも合わせてご参照下さい。
機能に沿った壁紙・壁材を選ぶ
壁紙・壁材は店舗の匂いや温度・湿気を調整する役割を持っています。そのため、店舗のコンセプトに合わせるだけでなく、用途を考慮して、壁紙・壁材を選定することがとても重要となります。
壁紙・壁材の断熱性、調湿効果、劣化速度やメンテナンスの容易さなど、店舗に合った機能を持つ壁紙・壁材を選定しましょう。
おわりに
本記事では、店舗における壁紙・壁材の種類、及び選び方のコツをご紹介いたしました。店舗の壁材・壁紙選びで重要なことは、見栄えと機能の二つを両立させることです。
見栄え重視にして、メンテナンスが困難であったり、店舗空間の環境が悪化してはいけませんし、機能ばかりに重点を置いて、店のコンセプトに合わない壁紙・壁材を用いることはないようにしましょう。
店舗デザインを得意とするデザイン事務所です。お客様にとって「心地よい空間とはなにか」という問いに対して真摯に向き合い、お客様に最適なプランニングをしております。
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