まず、私西口(TO代表)は「木(木材建築)」が単純に好きです。
木には表情があります。木があると落ち着いたり、温かい気持ちになったり、安心したりします。それは空間の居心地につながります。日本人の生活に「木」は常にそばにある存在として長い歴史を歩んできました。長い月日を我々は遺伝子レベルで「木」を感じて生きてきています。使う場所、使い方、優しい木目、猛々しいもの、様々な特徴を持っているのことも大きな魅力です。
木材や木材建築は人間や環境に与える影響は多方面に及び、多くの利点を提供してくれます。
木材は温かみがあり、自然の素材であるため、人々が心地良さを感じる環境を作り出すことができます。そして木の素材はストレスを軽減する効果があるといわれており、木材を使った建築物やインテリアはリラックス効果を促進します。また、木材は空気の質を改善する効果があるとされ、室内の湿度を調整することで健康的な居住環境を作り出すと言われています。
木材は再生可能な資源であり、適切な管理の下で収穫された木材は環境に優しい建築材料です。木材は成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を固定するため、木材建築は温室効果ガスの削減に貢献します。
木材は他の建築材料に比べて軽量で加工が容易なため、建築コストを下げます。そして地域の森林資源を利用した木材生産は、地域経済の活性化にも寄与します。
これらの影響は、木材の持つ自然な美しさや感触に加え、環境に対する責任ある対応も重要であると私たちは考えています。私たちはこれらの利点を最大限に活かし木を多用した建築を進めます。
だから私たちは、感覚的にも理論的にも「木(木材建築)」が好きです。
私たちは、多種多様な伝統技術を持つ職人さん達とお仕事をさせていただいています。特殊なデザインのレリーフ、建具、格子、照明などを空間に落とし込むときは、表現したいデザインの在り方を職人の方に伝え、技術的にできること、出来ないことを相談しながら制作します。
職人の方々は、木が育つ場所やその地域の木の特性を活かし、それを私たちが実現したい空間にどのように落とし込むことが最良かを考えてくれます。その知識や伝統技術を共有できることが私たちにとって財産であり、これから先に伝えていくことが必要なことなのだと思います。
木」を使用した店舗デザインがお客様に与える印象と効果は非常にポジティブなものが多くあります。
木を使用することで、店舗が自然環境とつながっているように感じさせ、訪れた人々にリラックスした気持ちを提供します。そして木の素材は、荘厳さや非日常感を演出しつつも暖かみがあり、お客様に心地よさと安心感を与えます。そして上質な雰囲気を作り出し、木の質感や木目は高級感を演出し、品質の良さを暗示することができます。
自然素材である木は心理的な安らぎを促し、お客様のストレスを減少させる効果があります。快適な環境はお客様が店舗内で過ごす時間を長くし、それが購買意欲の増加につながります。自然が生み出す美しい色あいや木目は樹種ごとに異なり、それらはお店を豊かに彩ります。
木材は室内の湿度を調整する性質を持ち、空気質を向上させることが知られています。店舗設計において「木」を取り入れることは、美的にも機能的にも多くの利点を提供し、お客様に対してポジティブな体験を創出することができます。
私達が店舗デザインで使用する主な木材をご紹介します。まず前提として木材は大きくわけて「集成材」と「無垢材」の2種類があります。まずはこの2つの用途の違いを理解しておきましょう。
集成材を一言で表すと「人口木材」です。小さく切り分けた複数の木材を乾燥させて、接着剤で組み合わせて作ります。 一般的には、柱や梁などの構造材に集成材を使用します。建材の原材料が安価なことに加え、施工性が良く、工事費用を抑えることができます。
無垢材は「自然の木材」です。木材を乾燥させてそのまま使用します。天然の木材を加工せずに使用するので、 木材ならではの風合い、特有の香りや肌触りを感じることができます。デザイン性が求められる壁やフローリング、インテリアへの使用に向いています。
木材は、樹種ごとに色味や模様、質感が異なり、見え方が変わります。さらに、価格はもちろんのこと、硬さや耐久性などの性質にも違いがあります。そのため、樹種による用途の向き・不向きがあるのです。店舗に木材を用いるときは、樹種ごとの特徴を理解し、使用する箇所にあったものを選ぶことが大切です。
空間に与える印象・効果 | 主な樹種 | 写真 | 使用のポイント |
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空間を和らげ、安らぎを感じる印象を与える | ヒノキ、ヒバ、アスナロ | ヒノキやヒバ、アスナロは、日本で昔から家やお寺などの建材として使用されることが多いです。特有の綺麗な年輪が、内装のアクセントとしていい雰囲気を出してくれます。 | |
空間に尖った洗練された印象を与える | ウォールナット | 耐久性や衝撃に強い木材であり、床やテーブルなどによく使用されています。独特な高級感のある色合いをしているため、店舗の内装に取り入れると格がグッと上がります。 | |
空間に固く重厚な印象を与える、天板などが最適 | オーク | 「ナラ」「ホワイトオーク」「レッドオーク」の3種類からなるオーク素材は、硬くて重く、耐久性があるのが特徴です。長く使い続ける大型家具や強度が必要な天板などに多く使用されています。 | |
ヴィンテージ感、落ち着きのある雰囲気を与える | チーク | 黄金色が経年変化とともに美しい飴色に変わり、チーク特有のツヤ感がでてきます。ヴィンテージ感を出したいお店や、落ち着きのある雰囲気のカフェなどの内装にピッタリな素材です。 | |
経年劣化で艶のある空間になる、家具の素材として最適 | パイン(マツ) | 「イエローパイン」「ホワイトパイン」「ポンデロッサパイン」「欧州アカマツ」などを家具の素材として使用します。経年変化で薄い黄色の色合いから艶がある色合いに変化します。 | |
和風などの柔らかい印象を与える | スギ | 杉(すぎ)は、天板・天井・腰板などに使用されるケースが多いです。柔らかい樹種なので、あまり人の手が触れない箇所に計画するのが最良です。 | |
ひかりを受けて、上品なモアレがでる樹種 | シカモア、トチ | シカモアや橡(とち)は、木目はあまりない無いですが、モアレ(干渉縞:視覚的に発生するモヤモヤとした縞模様)がきつく、光が当たると、きれいな光方をします。 |
日本で古くから使用されている木材は、調湿性に優れています。ジメジメしがちな夏でも空気がカラっとして、乾燥しがちな冬も過乾燥が抑えられ、快適な状態に保たれます。また、湿度が抑えられることで、結露によるカビの発生を防ぐ効果があります。
木材は鉄やコンクリートよりも熱伝導率が低いという性質があります。そのため、外気の温度が伝わりにくく、夏は涼しく、冬は暖かい環境が得られやすいです。それらのおかげて、店舗の光熱費を抑える効果も期待できます。
木材は「燃えやすい」イメージがありますが、そうではありません。木は火にさらされても炭化層が形成されるため、中心部までなかなか燃えないという性質を備えています。さらに、石膏ボードと組み合わせることで高い耐火性能を発揮します。
地震が多い日本で採用されてきた木造建築は、地震にも強いです。木材は鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも軽量で、柔らかくしなるため、衝撃を吸収する作用があります。さらに衝撃や音を吸収する効果もあります。
無垢材からはホルムアルデヒドなどシックハウス症候群などの原因となる物質は出てきません。さらに漆喰や珪藻土などを仕上げ材として使えば、さらにリスクは少なくなります。寿司店のカウンターなどでよく使用されます。
天然の木材から発生する「木の香り」には高いリラックス効果が立証されています。さらに木の滑らかな肌触りや衝撃を吸収する柔らかさは、お店全体の居心地の良さを高めます。
最後に、私達が手掛けた店舗デザイン事例をご紹介します。なお、デザイン事例ページには他にも多数の木材を使用したインテリアや木造建築の事例を掲載しておりますので、ぜひご参照ください。
すし屋の格は、カウンターで決まると言われるほど重要です。大将の本物志向の意向をくみ取り、カウンター材は、樹齢400年の木曽ヒノキを採用。岐阜県の山奥まで選定に行きました。
施主様のこだわりを汲んで10mの一本カウンターです。これは、ヒノキの柾目の突板を使用したフラッシュです。木の使い方で、見た目とコストのバランスをとっています。
霜降りのランダムかつきれいなラインをデザインで表現したいと思い、それを表面的なシートなどではなく、立体的に自然な曲線として表現したいと思いました。そこでデザインに採用したのが竹です。晒竹(さらしたけ)の風合いを活かしつつ、竹のしなりで立体的な曲線をデザインしました。
この店舗では、マホガニーという少し赤みが強い材料を採用しました。空間に対する無垢材の表情のイメージを、多くの樹種の中から、ピックアップし、空間に落とし込みます。
愛知県豊橋市のインフラを運営する鉄道会社の新オフィスのプロジェクトです。地産地消に観点から豊橋の木々をオフィスに使っています。
今回ご紹介した事例はあくまでも一例です。私たちは、施主様とのお店づくりに際して、施主様と徹底的にお店のデザインを考え抜きます。そのため、これまで対応してきた案件一つ一つにストーリーがあります。私たちと一緒に皆様に愛され、長く続いていくお店を作っていきましょう。