①和のディティール(形)を表現する
和というものは、様式の一つです。どのような和の雰囲気にするにも基本があります。その要素を取り入れることがまず大切な第一歩です。
私たちは、和の伝統を現代に息づかせる和風(和モダン・日本建築・伝統的建築・和式建築・和様建築・日本式インテリア・木造建築・伝統工法・数寄屋造り)の店舗デザインを得意としています。日本に古くから根付いている自然素材の温もりと、洗練された現代のデザインが融合した空間は、訪れるお客様に心からの落ち着きと安らぎを提供します。このページでは私たちの和風建築デザインに対する想いや考え方、なぜ和風が多くの方に支持されるか?をお伝えしていきます。また事例など通して費用についてもお話しして行きます。
和風(和モダン)な店舗デザインは、美的、心理的、機能的、そして文化的な面で多く選ばれる理由があります。シンプルさの中にも精緻な日本の美意識を感じさせ、訪れる人々に心の落ち着きとモダンな快適さを提供します。それらがもたらす心理的な効果(選ばれる理由)をより掘り下げて解説します。
和風デザインは、シンプルで洗練された美しさを持ち、日本の伝統や文化を感じさせるデザインは、国内外のお客様にとって新鮮で魅力的に映ります。その新鮮さとは、繊細な日本人の技術がお客様を呼び込ます。そして店舗に訪れる顧客にとって記憶に残る体験を作り出すことができます。
和室の伝統的要素を取り入れることで、穏やかで落ち着いた雰囲気の安らぎの空間を提供できます。また、無垢材(木材)、竹、石などの自然素材を使用することで、空間に本質的な空気感と、ぬくもりと質感を加えます。これらが生み出す居心地の良さはお客様の滞在時間の増加やリピーター獲得に繋がります。
シンプルで洗練された和モダンのデザインは、ブランドイメージを高める要素として機能し、食材・食品・商品・サービスの質の高さを象徴することができます。伝統的な素材や造作を現代的なデザインと組み合わせることで、独特のシャープさが生まれます。ブランドイメージが高まることでサービスの単価アップに繋がります。
上記で挙げた経験や体験を作り出すことでお客様へ記憶に残る店舗作りが可能になります。
さらに和風(和モダン)な店舗デザインは、デザイン面だけではなく機能面でもさまざまなメリットがあります。次は機能面でのメリットを解説いたします。
伝統的な「和」の要素だけではなく「モダン」を組み合わせることで、快適さと機能性を兼ね備えた空間を作り出します。和が生み出す穏やかな美しさと、モダンな部材、木材や什器が生み出す機能性のバランスを両立できます。
障子や襖などの伝統的な要素を活用することで、限られた空間を柔軟に分割し、多目的に使用することができます。無駄なスペースをなくすことで、席数や販売スペースを増やすことができ、利益率のアップに寄与します。
日本人というのは、歴史的に器用な人種で、これは現代にも建築技術や伝統技術として受け継がれています。そして、その和を創り出す技術というのは、その繊細さゆえの品の良さを醸し出します。
和風デザインで使用される天然素材は湿度や温度の調節機能が優れており、エアコンに頼り過ぎることなく、光熱費の削減に繋がります。お客様へのストレスを軽減し、リラックス出来る体験を提供できます。
畳や木材などの素材は、環境音を和らげる性質があり、店内の騒音を低減し、落ち着いた環境を作り出します。さらに、ヒノキやヒバなどは、香りによる防臭効果や抗菌効果がある部材もあります。
伝統的な建築素材を使用することは、文化の継承活動に繋がります。また自然素材を使用することで、修繕・修復しやすく、環境に配慮したサステナブルな事業を展開しているという印象を顧客に与えます。
ここまで和風(和モダン)デザインのメリットを主に解説してきました。これらのメリットを得るには、和風(和モダン)デザインの特徴を抑えて、和風とモダンの繊細なバランスを両立することが重要です。ここからは、和風(和モダン)デザインの特徴を解説します。
和というものは、様式の一つです。どのような和の雰囲気にするにも基本があります。その要素を取り入れることがまず大切な第一歩です。
和というのは、無駄と思わせる余裕が大切です。目で見た時、耳で聞いた時に余裕が生まれる「余白」をデザインすることで、居心地のいい和の空間になります。
和といっても、様々な自然素材を使用します。その有機的な素材の取り入れ方が、品と洗練さを持ち、居心地の良い、また来たくなる空間を創り出します。
照明は、和の素材にぬくもりを与えてくれます。それを、直接的に表現するのか、間接的に表現するのかで、お客様の感動が変わります。
伝統技術を取り入れる理由は、空間に付加価値をつけることと、その技術の認知度をあげ、継承するきっかけの可能性を広げることが目的です。その大切な技術をどのように店舗のコンセプトに乗せて作るかが大切となります。
家具、天板、椅子、など、肌に触れるものは、人に感動を与えます。「和の素材の良さとは何か」を肌を通じて感じてもらうことが大切です。
空間には、ストーリーがあります。和というキーワードを意識させる視線の方向が大切です。そこに施主の想いをかけ合わせることで、そのお店独自のストーリーが生まれ、唯一無二の空間になります。
私達が和風(和モダン)建築でよく用いる部材や技術を紹介します。伝統的なだけではなく、機能性や、コスト面での優秀さ、現代的なモダンさを持ち合わせたものを取り入れています。
木材は、桐、ヒノキ、竹などをよく用います。また、無垢材がよく使用されます。無垢材は、自然の木をそのまま加工した材料で、木の温もりと質感が際立ち、耐久性も高い。時間と共に味わいが増すのが特徴です。
御影石や大理石をよく採用します。これらを内装部材や水盆、敷石などで用います。また、石を模した特殊造形も良く使用します。石の質感を持ちつつ自由自在な形が作れる造形は、空間に唯一無二の印象を与えます。
照明ではよく行灯(あんどん)を用います。行灯は、壁にも、床にも様々な用途があります。和紙のもの、格子のもの、様々あります。和紙などを通して柔らかく漏れる光は、穏やかな雰囲気を作り出します。
土壁、漆喰、和紙、などを多く用います。さらに、それらの壁材の中にも多くの表現方法があり、唯一無二の独特な質感がデザインに深みを与えます。そして、その技法に対して、空間に合わせた表現を作っていきます。
和の伝統的な建具は、室内の美観だけでなく、使い勝手にも配慮されており、空間の調和と機能性を両立させています。障子、襖、畳、格子、暖簾、組子細工などがあります。
日本にしかない、木の冷蔵庫(氷室)であったり、包丁たてであったり、職人の方たちが、こだわって使用されるモノの使い方も大切です。これらを造る職人と扱う職人を引き合わせるのも私達の仕事です。
和風に見える、居心地の良いレイアウトが大切です。これらも和風によりすぎず、モダンによりすぎずなバランスが重要です。カウンターや小上がり席、個室、掘りごたつ、坪庭などを用います。
木格子や瓦屋根、漆喰壁などの伝統的な建築要素を取り入れることで、日本の伝統美を表現します。さらに、外灯や暖簾、生け垣、石垣、石畳などを用いることもあります。これらは時間が経つにつれて風合いが増します。
まず前提として、店舗デザインの費用は、「設計費」と「施工費」の2つに分けられます。設計費は、店舗の内外装のデザインや設備の位置、動線・レイアウトを決め、パース画(店舗のイメージ図)や図面を作成する際にかかる費用です。店舗の面積(坪数)または、施工費全体に占める割合から決めるのが一般的です。施工費は、内外装施工やインテリアの制作、電気・ガス・水道といった設備工事にかかる費用です。これを前提として、和風(和モダン)の費用相場を解説します。
設計費 | 面積から決める場合…坪単価5万円~15万円
総施工費から決める場合…総施工費の10%~20%(海外案件の場合、時間で算出します) |
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施工費 | 居抜き物件の場合…200万円~
スケルトン物件の場合…1,000万円~ ※建築する店舗の規模、物件、立地、部材などによって大きく変動します ※費用に関してはお気軽にご相談ください。 |
和風(和モダン)の店舗デザインは、現代の技術と伝統的な要素を組み合わせることで、機能性と美観の両立を図ることが重要です。そのため、繊細なバランス感覚や和風建築に精通したデザイン経験が必要となり、通常のデザイン設計費用よりも高価になりやすいです。また、オーダーメイドのデザインや特注の建具など、独自性を求めるほど費用は高くなります。
和風(和モダン)店舗の施工費は比較的高くなる傾向があります。伝統的な技法を用いる職人による手作業は、機械で量産するよりも高コストになりやすいです。しかし、その分、質の高い仕上がりが期待できます。さらに、和風建築に用いられる天然素材(無垢の木材、竹、石材など)は品質が高いものが多く、それに応じて費用も上がります。化粧板を使う、特殊造形を使うなどして、費用の削減やバランスの保持に務めることも重要です。どこに「こだわり」を持ち、予算を充てるかをデザイナーと入念に相談しましょう。
これまで私達が手掛けた店舗デザイン事例をご紹介します。また、デザイン事例ページには他にも多数の和モダン店舗の事例を掲載しておりますので、ぜひそちらもご参照ください。
このお店は、宅配弁当と飲食の両方を提供しています。そのため、お弁当を作って配達するキッチンの配置、お客様が受け取るために来店した時の動きやすさ、さらにはレストランとしてお客様が食事をする際の流れにも気を配って動線を設計しました。
また、高級な価格帯でサービスを提供しているため、お客様が快適に過ごせるような、「間」の空気感と雰囲気作りが非常に重要でした。店内の照明を工夫し、間接照明や行灯が作り出す温かみのある光の集まる場所を大切にしました。この光が映えるように、柔らかい印象を与えつつも洗練された見た目の材料を選びました。
特に、私たちのプロジェクトでよく使う特殊左官が大活躍しました。左官を使うことで柔軟性を生かし、店の入り口の通路の最後にある石や壁面に特別な仕上げを施しました。
部材名 | 印象・効果 | 写真 | ポイント |
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間接照明 | 空間を和らげ、安らぎを感じる印象を与えます。 | 間接照明は、照明は壁や天井に向けて光を当て、反射させることで空間全体を柔らかく照らします。空間内にできる光のたまり場を意識し、光が当たる素材が柔らかく映るようにしました。 | |
行灯 | 柔らかく温かみのある光を提供し、心地よい空間を提供します。 | 行灯のデザインも大切ですが、それが入る空間にどの高さで、どの角度から見せるかが大切です。そこにある照明には、しっかりと理由があります。 | |
エントランス通路の突き当りの石 | 石は空間に重厚感を与え、高級感を与えます。 | お店の入口から客席に入る手前の通路と客席を一度縁を切るための大切な壁です。それによって、奥への期待感と、視線の行先を作っています。 | |
特殊左官で3次曲線を表現する | スタイリッシュで洗練されたイメージを与えます。 | 3次曲面を形状を自由に作ることができる日本の技法左官により表現し、そこに柔らかな間接照明を当ててあげることで、空間の付加価値を上げています。 | |
入り口の格子戸 | 中から光が溢れることで温かみのある印象を与えます | 中を見せる安心感と、中からこぼれだす格子越しの光が、お客様に期待感を持たせます。 |
この店舗は、以前は、古民家を改築した和食料理店でした。物件を見学したときは、清潔感がなく、動線も悪い最悪の店舗でした。 そこを1Fは日本酒バー、2Fをワインバーとするためにデザインをしました。
この店舗の和を感じさせる表現は1Fと2Fで大きく違いがあります。この店舗は、ベースが古民家という和を感じさせる空間なのです。その既存の和をベースとして和を表現したのが、1Fです。
洋を取り入れ、古民家をモダンに表現したのが2Fです。同じ古民家でも、使う素材やディティールを使い分けることで、1Fと2Fで全く違う和モダン空間を作り出しています。
部材名 | 印象・効果 | 写真 | ポイント |
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白木のカウンター | 本物を使用していることへの期待をあげる効果があります。 | 空間における存在感の為に仕様しています。本物質感と肌触りが触れた人に期待を与えます。 | |
扉の取っ手 | 細部にまでこだわりが感じられ、使うたびに特別感を演出します。 | 気づかれにくい、無くてもいいデザインですが、その意味が分か流人を大きく引き付けるデザインとなっています。 | |
VIPルームのアンティーク調の家具 | 歴史的な雰囲気を感じさせ、上品でクラシックな印象を与えます。 | ベースが和の古民家だけに、日本の昔の住宅の雰囲気が残ってしまいます。洋のクラシックな雰囲気を持った空間をつくることで「モダン」となります。 | |
木材でできた格子窓 | 自然で温かみのある印象を与え、伝統的かつモダンなスタイルを両立させます。 | 木材を用いた格子戸は、光を適度に取り入れつつプライバシーを守ることができます。古民家特有の重厚な雰囲気を引き立てます。 |
焼き鳥の高級業態の案件になります。カウンターでの調理を見せるために、効率的かつスタイリッシュな下引きの排気フードを採用しました。これは排気効率が良く、カウンター内のデザインをすっきり見せることができます。
カウンターバックの壁と柱には、石を使ったデザインを採用しましたが、実際には特殊な左官技術を使って石のような見た目を実現しました。これにより、本物の石のような外観を、より簡単に施工できる方法で表現しました。
また、個室には、以前足袋屋を営んでいた大家さんへの敬意を表して、店内に足袋の要素を取り入れることにしました。三重県の伝統工芸である組細工格子を使い、足袋のデザインを創造的に表現しました。この足袋のデザインは、個室の組細工に組み込まれています。
部材名 | 印象・効果 | 写真 | ポイント |
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特殊造形の石壁 | 石積の壁面と木を組み合わせることで、モダンな空間とする。 | 特殊左官で作ったため、本物の石と比較して、軽量でメンテナンスもしやすいです。コストを抑えつつ、高級感を演出できます。 | |
三重県の伝統工芸の組子細工 | 和の趣を感じさせる上品な印象を与えます。 | 組細工の繊細かつ洗練さを照明、と組み合わせることで、技術を浮かび上がらせることができます。 | |
足袋(たび)をモチーフにした組子細工 | 伝統と、お店の想いを表現する。 | お店に関わる人たちの大切な気持ちを汲み取ることで、その空間に「想い」が宿ります。その想いが話題性を生み、集客にもつながります。 | |
土壁のファサード | 重厚でありながら自然で温かみのある印象を与えます | 高級感や非日常を演出するために、あえてお店の中を見せすぎないようにしています。分厚い壁の感じが、特別感を演出しています。 |
和風モダンをモチーフとした高級クラブのプロジェクトです。天井高が低い物件だったため、意匠照明を採用しています。 天高が低い空間を広く見せ、且つ入店したときの見え方の演出を考え、このライティングを採用しました。
ホール全体に設置された格子は、DRC(ロマネコンティを製造する会社)のワイン木箱にインスパイアされたデザインです。ロマネコンティの木箱には特有のナンバリング(1010)があり、これがワインの種類を表しています。
店内ではこのナンバリングを抽象的にデザインに取り入れ、店のコンセプトとして表現しています。この格子デザインが、店内を埋め尽くす圧巻の視覚的要素となっています。
部材名 | 印象・効果 | 写真 | ポイント |
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ホテルのラウンジのようなカウンター | 重厚さや高級さを演出します | Oと一のモダンな格子柄に、竿縁天井の和のディティールを組み合わせ、どちらも感じられるようにしています。 | |
Rを用いた入り口通路 | 柔らかさと流れるような動きを感じさせます。 | 曲線的な通路は、視覚的に興味を引く特徴を持っています。また、直線的なデザインに比べて、記憶に残りやすく、奥に対する期待感をいだかせます。 | |
天井を高く見せる意匠照明 | 開放的な雰囲気を与え、豪華さと心地よい空間の印象を強調。 | すべてキーデザインのディティールに、造形されたシーリングカバーをオリジナルデザインで製作し、 そこに各テーブルにあてるダウンライトを入れ込んでいます。 |
代表デザイナー経歴
株式会社TO 代表取締役 代表デザイナー
西口 宗希(Nishiguchi Hiroki)
大学で都市計画を専攻し、卒業。建設コンサルタント会社に2年間勤務。その後退職し、神谷デザインで勤務。2010年、神谷デザインを退職し、デザインオフィスTO 創業。2016年、株式会社TO設立。現在は、同事務所代表他、名古屋女子大学でインテリアデザイン科の非常勤講師を務める傍ら、2021年にNew York Office 開業。
主なデザイン受賞歴
2016年 JCD design award 金賞 「長者町焼肉 輪心」
2018年 JCD design award 金賞 「Club ROMANEE」
2020年 JCD design award 銀賞/審査員特別賞「すし昇」
今回紹介した事例はあくまでも一例です。私たちは、お店づくりに際して、施主様や施工業者、職人と一緒に徹底的にお店のデザインを考え抜きます。そのため、これまで対応してきた案件一つ一つにストーリーがあります。私たちと一緒に皆様に愛され、長く続いていくお店を作っていきましょう。私たちが和風(和モダン)の店舗をデザインは私たちにお任せください。