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お客様の声・オーナーインタビュー
まつりグループ 代表取締役社長 飯田昌登 様
2024-10-31

炭焼きうなぎ・かしわ 登河(とがわ)栄店のデザインを担当させていただきました飯田様のインタビューをご紹介します

担当デザイナー西口:本日は「炭焼きうなぎ・かしわ 登河」や「居酒屋ぴち天」など、多くの店舗デザインを担当させていただいた、株式会社まつりグループの飯田社長にお話をいただきます。

古民家改築のうなぎ屋を開こうと思った理由

古民家改築店舗のうなぎ店の外観ファサード

西口:さっそくですが、栄(名古屋市の繁華街)の古民家を選ばれた理由は何ですか?

飯田様:この場所を選んだ理由は、名古屋の中心地である栄のど真ん中に、細い路地裏の長屋として古民家が残っていたことです。この場所をうちの理想とするうなぎ屋さんとして再生できれば、非常に魅力的な店舗になるのではないかと感じました。まさに、一目惚れしたような気持ちですね。

この建物の作りや雰囲気、そして場所、すべてが理想的にマッチしました。デザイナーにとっても非常に大変だったと思いますが、完成したときは見事に再生されていて感動しました。最初はボロボロの状態でしたし、大変な作業だったことを改めて感じます。

完成したときには「本当にここに人が住んでいたんだな」という雰囲気がそのまま残っていて、とても感慨深かったです。良い部分はしっかり残し、たとえば柱などの大切な要素をそのまま活かして再生してくれたのは、とても良かったと思います。

うなぎを選ばれた理由は何ですか?

飯田様:ずっと飲食業をしてきて、特に居酒屋でお酒を中心とした商売をメインにやっていました。しかし、昨今、アルコール離れが進み、居酒屋だけでなく新しい事業を始めたいと考えました。そこで、鰻屋さんがいいかなと思ったんです。もともと私は板前で、鰻も扱っていたので、自分も好きなことですし、やるからには好きなことじゃないと続かないと感じました。始めた当初は苦労しましたが、その分やりがいも感じています。

うなぎ屋を開業するときに苦労したこと

西口:開業される際、どんなことで苦労しましたか?

飯田様:一般の方が見ると、うなぎ屋さんは居酒屋と比べて刺身や煮物、揚げ物といったメニューの種類が少なく、在庫管理もシンプルに思えるかもしれません。しかし、うなぎしか扱わない分、逆にその難しさがあります。例えば、居酒屋のランチは1,000円以下で食べられることが多いですが、うなぎ屋では昼でも4,000円〜5,000円ほどいただくことになります。

その際に、どう差別化を図るかが重要です。ただうなぎやご飯が美味しければいいというだけではなく、雰囲気も含めて感動してもらえるようにする必要がありました。食べる前から美味しさが伝わるような体験を提供することが大切だと思っています。料理だけでなく、雰囲気作りや設備にも投資が必要で、その点では苦労もありましたね。

西口:味には結構苦労されたんですか?

飯田様:はい、とても苦労しましたね。定期的に安定した品質のうなぎが入らないこともあり、新しい業者さんとのやりとりもありました。うなぎの大きさや状態が一定でないときもあって、そういった点でかなり苦労しましたが、今では安定した品質を提供できるようになり、お客様にも喜んでいただけています。

TOとのつながりに関して

西口:今こちらのお店は何年目ですか?

飯田様:もう6年か、7年目くらいですかね。

西口:もうそれくらい経ちますね。前職時代から、私が飯田さんのお店に関わらせていただいてからもう18年が立ちますね。

飯田様:懐かしいですね。

西口:途中で他の選択肢もあったと思います。その中で、なぜうちを選び続けていただけたのでしょうか?

飯田様:そうですね。私の考えをすぐに察して形にしてくれるところが、とてもありがたく感じています。これは多分、私の感性や感覚に共鳴する部分があって、西口さんの方がインスピレーションを得ながら私の要望をすぐに形にしてくれるからこそ、長くお付き合いできているのだと思います。

普通なら難しい要望があれば最初に「できません」と断られることが多いかもしれませんが、西口さんはまず「やりましょうか」と言ってくれて、実際にやった場合の具体的な形や提案を示してくれるんです。最近はすっかり有名になってしまって、少し予算的に厳しいこともありますが、本当に頼りにしています(笑)

西口:いやいや(笑)そこはちょっと金額見直そうかなと思っています(笑)これまでいくつもお店をやらせていただいて本当にありがたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。

お店のイメージの作り方について

西口:飯田さんはお店を開かれる前に、「料理はこれがいい」「お店の雰囲気はこうしたい」など、色々とシュミレーションしてから僕にお話をしていただいていると思うのですが、どういうタイミングでそれを思い浮かばれるんですか?

飯田様:例えば料理に関しても、「こういう料理をやろう」と決めたとき、その料理に合う雰囲気や、それを楽しむお客様の様子をイメージしています。どこか特定の場所、例えば東京や京都に行ってインスピレーションを得たというわけではなく、むしろ自分の中にあるイメージを基に、「自分だったらこうしたい」「こういう空間で提供したい」と常に思い描いています。

基本的に私は自分の好きなことしかやりたくないんです。特に食べ物に関しては、自分が好きなものでなければ手がけないようにしています。例えば、蕎麦が好きだから蕎麦屋をやる、天丼や寿司、鰻が好きだからそれらのお店を手がける、といった具合です。

逆に、イタリアンが好きではないので、それをやってもうまくいかないと思います。私は経営者として立派というわけではなく、何をやっても成功するとは思っていないので、自分がどれだけその事業に魂を込められるかが大事だと感じています。

今やりたいと思っているのは本格的なカツ丼屋さんで、カツ丼を提供するならこういう雰囲気でやりたいなというイメージは湧きますが、それを図面に落とすことはできません。そうしたイメージを形にしてくれる西口さんの存在が本当にありがたいと思っています。もし自分でそれができたら、きっとデザイナーになっているでしょうね(笑)。

西口:そうですね(笑)

デザインのこだわりについて

西口:やり取りを重ねる中で、飯田さんのこだわりが強くなっていくと、こちらも負けじとこだわりを持って応じています。お互いに譲らない部分が出てきて、意見をぶつけ合うことも多いですよね。飯田さんとしては、そのようなやり取りをどう感じていますか?

飯田様:そうですね、「イエスマン」はあまり好きではないんです。常に「はい、わかりました」と言っているだけだと、いざ頼んだものが完成して納得がいかないとき、「やれるって言ったじゃないか」となってしまいますし、私も納得できなければ「やり直してほしい」と言ってしまいます。

例えば、「この日までに仕上げてほしい」とお願いしても、納期や材料の確保といった制約があるのは理解していますし、期限を守ってもらいたいという気持ちはあります。しかし、自分のイメージ通りでないのであれば、納期を延ばしてでも妥協はしたくありません。後で必ず後悔してしまいますから。そこはデザイナーの意見をぶつけてもらって納得して進めたいな、と思いますね。

西口:やはり引き渡しの際には、飯田さんがよく細かくチェックされますよね。そのチェックがあることで、こちらも気を引き締めてしっかり作ろうと思えます。

デザイナーからの提案に関して

西口:飯田さんの場合、私が提案した左官だったり、意匠照明だったりを受け入れてくれるじゃないですか。それはどうしてですか?

飯田様:最初は、僕も普通の壁にした方が絶対に安いのに、と思っていました。でも、年月が経つと、「やっぱりこうして良かったな」と思うんですよね。これはデザイナーの力だと感じます。

例えば、1つ装飾を加えるだけでも、普通の壁だけにするよりもコストが増えます。正直、当初はこうした装飾は不要だと思っていました。でも、西口さんがデザイナーの視点で「どうしてもやりたい」「絶対にかっこよくなるし、雰囲気も出る」と説得してくれて、作ってもらいました。今、6年7年経ちますが、全く色褪せず、むしろ時間が経つほど味わいが増していくと感じます。

結果的にこの雰囲気が店全体を引き立ててくれていると実感しています。これによって、仕入れ値の値上げがあったときに、うなぎやひつまぶしの価格を4,000円から4,200円、4,300円と少し上げることができます。雰囲気によって、最初のひと口を食べたときに「うまい」と感じてもらえるかどうかは大きい。そのひと口目の感動があるかどうかは、本当に何とも言えない大切なポイントですね。

ただ、業態や客層によって使い方を考えなければなりません。例えば、大衆居酒屋のような場所では、酔ったお客様が乱暴に扱ってしまうこともあるので、装飾にお金をかけすぎると修繕費がかさんでしまうこともあります。

西口:そうですね、こうした装飾や雰囲気の工夫は付加価値を生む要素だと思います。年月を経て味わいが出てくる素材や装飾が、空間の雰囲気を高めてくれます。やっぱり、クロスや塗装などは、時間と共に劣化することが多いですが、土壁は逆に経年変化が良い雰囲気を生む部分に少しずつでも取り入れてもらえると、よりお店の価値が引き立つのではないかと思います。

坪庭へのこだわり

飯田様:あとは、坪庭にもこだわりがあったね。つぼ庭については、どうしても自分が取り入れたかった要素の一つでした。小さな店ながらも、四季の移ろいや雨の日の情緒が感じられる、そんな空間になればと思っていました。こうした要素があることで、時間が経っても変わらない魅力を持つ場所になったと感じます。このときも西口さんの提案があったから、トイレからつぼ庭が見えたり、店内から坪庭が見える導線を作ってもらえましたね。

西口:そうですね。この庭、飯田さんこだわってましたね。 エントランスの石畳から坪庭まで動線をつなげるようにすることに苦労しました。

飯田様:そうそう、そういった細かいこだわりや、ビジュアル的な部分までしっかりと通じ合っていて、ずっとサポートしてもらっている感じですね。

最後に、今後のお店の展望などを教えてください。

西口:飯田さんは次のステップについてどう考えているのか、お聞きできたらと思います。今までの仕事やプロジェクトに対しての思い、そして将来的にどんなビジョンを持っているのか、ぜひお話しいただけると嬉しいです。

飯田様:そうですね、例えば居酒屋だと、これまでは、100席を超える大規模な店舗を手がけていることが多いですが、これからは少し違うアプローチも考えています。今後は、もっと小規模で、独立したい人に向けた店舗経営も視野に入れています。

例えば、160席や170席の大きなお店ではなく、20坪、30坪くらいのスペースで奥さんと二人で切り盛りするような小規模な形もありなのかなと。自社の居酒屋ブランドの小型版も考えているところです。うなぎの店舗は今のところ好調ですし、良い場所が見つかれば、古民家の再生なども取り入れていきたいですね。最近は古民家の話もよく聞くので、そういった面でも新しいチャレンジができたらと考えています。

今は人材の雇用やスタッフの採用が本当に大変で、私もできる限りのことはやっているのですが、人手不足が深刻で非常に厳しい状況です。現在、海外のスタッフとも一緒に働いていますが、なかなかうまくいかず、少し足踏みしている状態かもしれません。

西口:人手不足の問題は、どこのお店も同じ状況ですね。良く聞きます。

飯田様:そうですね、今はまさに踏ん張り時だと思っています。厳しい状況の中で撤退しているお店も多く、良い物件の空きも増えています。そういったチャンスをうまく見極めながら、新たな出店に繋げていけたらと考えています。

西口:ありがとうございます。懐かしい話から、今後の話まで色々とお話しいただきました。どうぞこれからもよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。

飯田様:ありがとうございました。

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