物件名 : うなぎかしわ 登河
面積 : 1F16.5坪 2F9坪
客席数 : 32席
工期 : 計画期間 45日 施工期間 30日
請負業務: デザイン設計業務、デザイン製造業務(特注照明、特殊左官、坪庭提案 etc)
躯体構造: 木造 築80年(長屋)
竣工 : 2019.11.20
備考 : 古民家を改装したうなぎ専門店
お店情報: https://matsuri-togawa.com/
一緒にお仕事をさせていただいて、10年以上の名古屋で10店舗ほど飲食店を展開されている企業の新業態です。居酒屋業態、天丼専門店など弊社でデザイン設計のお手伝いをさせていただいており、今回のプロジェクトは、古民家改装のうなぎ専門店をやるというお話から始まりました。
いつものように、社長から「現場を見てほしい」と物件内覧の同行依頼をいただきました。伺った先は、名古屋の中心である栄のど真ん中。百貨店や店舗が立ち並ぶ町中に、一区画だけ雰囲気のよい路地に木造長屋建築がありました。そこは、住居と店舗が混在しており、社長と不動産業者から出店に際しての注意事項をお聞きしました。
①近隣住民に対する臭いの配慮
②営業時間の制限
③古い建物のため、補強などはすべてテナント工事 etc
社長 「この条件で、ここでうなぎ屋ができるかな?」
私 「できると思います。ただ、いくつかの問題点をクリアする必要があると思います」
ここで、この物件のクリアする課題は以下です。
・古民家住居で2階建のため、1Fにキッチンを作り、設備が通るルートを設けると、天井高がものすごく低くなってしまうこと。(CH1800、天井高が1m80cmしかなくなる)
・うなぎを備長炭で焼く焼き場の上に、60cmの排気設備(フード)を設置する必要があるため、上記の基本天井高からさらに下がってきてしまうこと。
・2階へ上がる階段の位置と、2Fに設置するパントリー(収納スペース)の位置関係
主な課題はこの3点です。設備設計もデザイン設計の一部であり、ここでどれだけ知恵を活かせるかが、最終的な仕上がりや見栄えに大きく影響します。
さらに、社長から以下のご要望をいただきました。
a) 庭を作りたい。
b) 水を流したい。
c) ダムウェーター(厨房内の食事専用エレベーター)を設置したい。
d) 2Fの窓から客席や店内の雰囲気を見せたい。
住居と店舗が混在するエリアにあること、庭に対するご希望に答えるため、以下のポイントを設定し、設計いたしました。
焼き場上のフードの問題は、フード(60cm)を2階フロアに飲み込ませ、2階のその範囲をダクトスペース・パイプスペース(上下階を通る設備の通り道)にしました。これにより、外へ抜く排気ダクトを屋根の上に設置しやすくなり、かつ焼き場上部の天井高も確保ができました。
古民家の場合、邪魔で抜ける柱とそれをできない柱の見極めが大切です。それを、現地で大工さんと相談しながら検討して抜いていきました。柱を抜いた後は、補強柱を別の場所に追加する場合もありますし、補強しなくても大丈夫な場合もあります。
店前の路地から店内と庭が見えるように、店舗入口の位置と階段の位置、厨房の位置のバランスをとりました。そうすることで、訪れたお客様がエントランスから店内までのストーリーを想起できるようにしています。
築80年の古民家、施主の思い、業態、近隣住民の理解、すべてをクリアすることがデザイン(問題解決)ができることです。お店を雰囲気良くすることももちろん大切です。しかし、そのお店が長く続けていただくために何をするべきかを考えることがデザイナーのする最大の役割です。この物件は、近隣住民さまとの関係、施主の思いをバランスよく形にすることに最も注力しました。デザインは、形があるものばかりではありません。
「エントランスから店内につながる石畳の通路は、雰囲気があっていいね。」
「坪庭がやっぱりいい」
社長からこのような感想をいただきました。作り手冥利に尽きます。新業態、古民家、近隣住民いろいろな諸条件の中、満足していただいたことが何よりよかったと思います。
店舗デザイン、開業に関するご相談は、お問い合わせフォームまたは、お電話(052-414-4224)にて、お気軽にご連絡ください。私たちは、施主様の想いを汲み取るために「施主様から直接お話を聞く」というフェーズを大切にしております。まずは、施主様の想いを、ありのままにお話頂けますと幸いです。持続可能な店舗を一緒にデザインしていきましょう。