新規で店舗を開店しようとする際に、「リースバック方式」という言葉を目にすることがあると思います。今回は、「リースバック方式」とは何なのか、利用する場合のメリット・デメリットはどのようになっているのかを説明していきます。
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リースバック方式(建設協力金方式)とは
リースバック方式(建設協力金方式)とは、ある土地に出店・開業したいと考える事業主が土地のオーナーに対して、建物の建設資金(建設協力金)を支払い、土地のオーナーが土地に建物を建設し、その建物を事業主に賃貸するという土地活用の方法のことです。
土地・建物はオーナーの名義のままで、建物を事業主に賃借することになります。
事業主は、賃貸借契約に基づいて毎月オーナーに土地・建物の賃料を支払いますが、当初オーナーが事業主から提供された建設資金は「保証金」という名目に変わり、建物賃料から相殺されていく形で、オーナーから事業主に返還されていきます。
リースバック方式の活用
リースバック方式で土地活用を始める場合、一般的にはデベロッパーと呼ばれる事業者とリース契約を結ぶことになります。デベロッパーはマーケティング力に優れていることから、所有している土地の適性や市場をみて、最適な事業計画を提案してもらうことができます。
この事業計画をもとにどの事業者に土地をリースするかを決めることになります。リースバック方式を採用した土地は、飲食店、商業施設、介護施設、コインパーキング、コンビニ、アパートやマンションとして活用されることが多くなっています。
リースバック方式のメリット
土地オーナー、事業主それぞれどのようなメリットがあるか紹介していきます。
土地オーナーのメリット
・建物の建設費用のすべてを自己資金または金融機関からの融資で用意する必要がなく、事業主から無利子もしくは低金利で借用することができる
・土地を売却することなく資産を有効活用できる
・テナントを募集する必要がなく、資産を有効活用でき、もしも事業主が中途解約した場合には、保証金の返還義務がなくなる可能性がある
・節税効果がある(所有している土地を第三者に貸し出すことで、土地や建物の相続税評価額を最大30%下げることができ、建設協力金で負債として扱われるため課税遺産額からその分減額される)
事業主のメリット
・土地を所有することなく、新たに建設された自分の事業のための建物を利用することができる
・土地オーナーとの交渉次第で、収益が見込める立地に出店・開業することができる
・建物はオーナー名義の所有物であるため、契約終了時に建物を残したまま撤退できる(現状回復として取り壊す必要がない)
リースバック方式のデメリット
土地オーナー、事業主それぞれどのようなデメリットがあるか紹介していきます。
土地オーナー側のデメリット
・建物は土地のオーナーの所有物となるため、建物にかかる固定資産税の支払い義務が発生する
・事業主との契約が終了した場合、建物はそのまま残るが同種の事業以外では継続使用が難しいケースが多い(別業種への貸し出しを実施する場合には、工事が必要となる)
・中途解約の場合、返済義務のなくなった建設協力金が不動産所得となり、所得税の課税対象となる
事業主のデメリット
・リースバック方式は、出店する事業主側に建物の建設資金が必要であるため、個人事業主が直接行うのはハードルが高い
・事業計画上の売上見込みをきちんと立たうえで賃料の設定をしないと、収支のバランスが崩れ経営を圧迫してしまう
・オーナーとの契約を中途解約すると、保証金の返還を放棄しなければならなくなる可能性がある(事業が頓挫してしまった場合、リスクがさらに増える)
事業用定期借地権とは
リースバック方式(建設協力金方式)とよく似ている土地活用の方法として、「事業用定期借地権」があります。事業用定期借地権とは、定期借地権における契約方法のひとつで、事業の用途のみに限定して期間を定めて事業に土地を貸す権利のことです。
契約期間(借地期間)は10年以上50年未満で、自動更新はなく、契約期間満了後も借地人が事業を望む場合は、土地オーナーと協議し再契約が必要となります。契約の際には、公正証書により契約を交わさなければならず、契約期間満了後は、借地人は土地を更地にして返還しなければなりません。また、事業用途のみに限定されているため、居住用のたてものを建設することもできません。
事業用定期借地権とリースバック方式との違い
リースバック方式と事業用定期借地権では、以下の点で異なります。
リースバック方式 | 事業用定期借地権 | |
賃貸の対象 | 建物 | 土地 |
建物の名義 | オーナー | 事業主(借主) |
契約満了後の状態 | 建物が残ったまま | 更地 |
節税効果 | あり(相続税の評価額が落ちる) | なし |
上記表からもわかるように、両者の違いで一番大きいのが、建物を対象にしているか、土地を対象にしているかです。ここが違うだけで、建物の所有者(名義人)や契約期間満了後の扱いが変わってきます。
事業用定期借地権では、土地はオーナーのもののままですので、毎年固定資産税がかかってきます。そのため、長期間利用する予定がない場合には、事業主に貸し出して賃料を得ることで、固定資産税を納めていくという方法も考えることができます。
おわりに
今回は、「リースバック方式(建設協力金方式)」について説明してきました。リースバック方式は、自身の所有のまま土地を活用することができ、相続税の節税効果もあり優れたに見えますが、土地に建てた建物は土地オーナーの所有であるため、固定資産税が増加したり、事業主の撤退後の活用が困難であったります。
リースバック方式を採用することを考えている場合には、15~20年後を見据えた検討を行ってください。もし、事業主から提案され、自分では検討しきれない場合には、税理士やファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。
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