店舗やオフィスの「排煙設備」とは?「排気設備」との違いを建築基準法を交えて分かりやすく解説します

建築設計デザインの基礎知識
建築設計デザインの基礎知識

建物の窓の近くなどに、排煙、排気と書かれたハンドル等があるのを見たことがある人もいると思いますが、これらがどんなものなのか、排煙と排気の違いは何なのかなどを建築基準法を参考に説明していきます。

私たちTO(ティーオー)は、店舗・オフィスなど商業施設の設計を得意とするデザイン設計事務所です。店舗デザインに対して真摯に向き合い、無理のない最適なプランニングをしております。私たちのデザインの流れについてはこちらのページをご参照ください。

排煙設備とは

排煙設備とは

排煙設備とは、火災時に発生する大量の煙を外に排出するための設備で、飲食店の厨房などで発生する煙を排出するためにあるものではありません。排煙設備は、火災で発生した煙を外部に排出することで建物内の人が非難するための経路と時間を確保するという目的で設置されています。

そのため、部屋だけでなく、通路やエントランスなどにも設置が求められます。具体的にどのような建物に排煙設備が必要かについては、建築基準法施行令第126条の2で規定しています。

排煙設備の設置については、建築基準法施行令第5章(避難施設等)と消防法施行令第7条(消火活動上必要な施設)によって定められています。それぞれ設置基準・構造基準、また設置緩和要件が異なりますので、設置に関しては個別に確認する必要があります。

排煙設備の種類

排煙設備には「自然排煙設備」と「機械排煙設備」の2種類があります。

自然排煙設備

「自然排煙設備」は、煙が上方に登っていく性質を利用し、天井付近に設置した窓を必要な時に開放することで煙を外部へ排出する設備のことです。一般的に、防煙区画の最大床面積は500㎡以下とされており、排煙口から防煙区画までの水平距離は30m以下とされています。

防煙垂れ壁は、耐火性能のある梁、熱割れを防ぐ網入りガラスなどが利用されますが、防煙区画として有効な垂れ壁にするには天井から50cm以上突き出す必要があります。排煙口の取り付け位置は、天井高さが3m未満は天井から80cm以内に取り付ける必要があります。

天井高さが3m以上の場合は、床面から2.1m以上、かつ、天井高さの1/2以上が排煙に有効な部分となります。また、排煙口を開けるための開放装置は、手動開放装置を設け、壁付けの場合は床から80cm以上1.5m以下の高さに取り付ける必要があります。

機械排煙設備

「機械排煙設備」は、機械を使って煙を強制的にダクトから屋外へ排出する設備です。火災時の避難に関係する設備であるため、停電時などでも稼働できるように非常用の電源を備えています。煙の流れや排煙量をコントロールできることや、直接外気に面していない区画や地下室などでも計画的に排煙できるといった利点があります。

しかし、ダクトやそれを設置するスペースが必要になったり、停電などに備えて予備電源が必要になったりするなど、システムが複雑になるため、コストも高くなりますし、保守管理の手間も必要です

排気設備とは

排気設備とは

排気設備とは、「換気設備」を構成する一部分の要素のことを指します。換気設備とは、室内の空気を屋外に排出する「排気設備」と、屋外から綺麗な空気を室内に取り入れる「給気設備」で構成され、室内の空気を入れ替えるシステムとしてどの建物にも設置することが原則です。

特に焼き肉店などの飲食店で、発生した煙や熱、水蒸気などを外に排出する設備が排気設備となりますので、想像しやすいと思います。

排気設備の種類

排気設備を含む換気設備には、室内外の温度差や風圧を利用して換気する「自然換気」と、機械により強制的に換気を行う「機械換気」があります。

自然換気

「自然換気」は風または室内外の温度差や風圧を利用し、窓や扉などの隙間から自然に外気と室内の空気とが入れ替わる現象のことです。

機械換気

機械換気

「機械換気」は機械ファンの使用箇所によって3つの方式(第一種・第二種・第三種)があります。

第一種は、給気と排気の両方で機械ファンを使用する方式で、室内と屋外の気圧差の調節や、空気浄化装置や熱交換器を組み込むことで空気を安定的に維持できることから、オフィスビルや集合住宅、戸建住宅といった常に人がいるところで使われます。

第二種は、給気を機械ファンで行い、排気を自然換気で行う方式で、室内に入る空気をコントロールできるため、汚れた空気の侵入を防ぐことができ、病院の手術室やクリーンルームなど清潔な空間を保つことが求められる場所に使用されています。

第三種は、給気を自然換気で行い、排気を機械ファンで行う方式で、直接的に汚れた空気を取り除くことができるので、トイレやゴミ置場、飲食店の厨房などで多く使用されるほか、比較的低コストで導入できるため、住居などの居室などでも使用されます。キッチンやお風呂、トイレ等にある換気扇などを想像するとイメージがつきやすいかもしれません。

空調換気設備(全熱交換器)

第一種換気を発展させたものに、空調換気設備(全熱交換器)というものがあります。室内の換気を行うと、冷暖房機などの空調設備によって適温になった室内の空気が排気されてしまい、夏は外部の暑い空気が、冬は冷たい空気が給気されるので、冷暖房の効率が悪くなってしまいます。

そこで、熱交換器を搭載した空調換気設備を使用すると、換気時に室内の空気と外気の熱のみを移動させることで、室内温度をできるだけ保ったままでの換気が可能になります。温度変化を抑えることにより冷暖房設備の負荷を下げて省エネにつながり、電気代が少なくなるのが大きなメリットです。

まとめ

排煙設備と排気設備について

今回は、排煙設備と排気設備について紹介してきました。今回は、法律の内容を詳細に説明したわけではありませんので、実際に自分が回転しようとしている店の規模などを元に各設備の設置について法的な制約を踏まえながら検討してみてください。

法規定に関しては、建築士など専門職の人が詳しいですので、相談する際に併せて確認してみるのがいいでしょう。もちろん、私達にお気軽にご相談ください。