歯科クリニックを開業、または改装するにあたって、一番の悩みどころといえば店舗全体のデザインではないでしょうか。「どういう点に気をつければいいかわからない」「リラックスできるデザインは?」と悩みを抱えている方も多いと思います。
日本全国で歯科医院の数は年々増えています。そのため、店舗デザインによって近隣の競合院との差別化をはかることは、クリニックの集客において非常に重要です。今回は「かかりつけの歯医者にしたい」と、患者様から選ばれる歯科クリニックのつくり方を店舗デザインの観点から解説してみます。
こちらの記事で掲載している店舗の画像は、すべて私たち株式会社TOでデザインいたしました。気になるデザインがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
歯医者の店舗デザインのポイント
歯科クリニックの店舗デザインを考えるにあたって、大切にしたいポイントを4つ紹介します。治療だけでなく、検診など定期的に来院する機会がある場所だからこそ、「居心地の良いクリニック」「通いたくなるクリニック」と思ってもらえるよう、ポイントをしっかりと抑えましょう。
ターゲットとなる患者様の年齢層の把握とコンセプト決め
内装を考えるにあたり、来院する患者様の年齢層を把握することがカギとなります。
例えば、駅近のクリニックであれば、通勤のついでに立ち寄る働く世代に向けた内装を意識し、住宅街や商業施設周辺などのファミリー層が多い場所のクリニックでは、お子様からお年寄りまで幅広い世代に好まれる内装を意識することで、患者様が通いやすいクリニックづくりができます。
そして、土地柄などに合わせた年齢層を把握し、コンセプトを決めていきます。「おしゃれで洗練された空間」や「お子様でも通いやすいアットホームなクリニック」など、コンセプトを設定しておくことで必要な設備も見えてくるので、デザインが考えやすくなります。コンセプトと店舗デザインが合致していると、クリニック全体に統一感が生まれ、患者様への信頼にも繋がっていくため、ブランディングの一環としても重要な部分です。
入りやすい外観
歯科クリニックだけに限らず、店舗の印象として最初に目に入るのは外観です。せっかく内装にこだわってクリニックをつくっても、一目で歯科クリニックとわかりにくかったり、入りづらい印象になってしまっていたりすると、肝心の集客に繋がりません。外観は道行く人への一番の広告になると考え、内装と同様に入念にデザインを考えていきます。
プライバシーに配慮した空間づくり
近隣の方が通うことの想定される歯科クリニックでは、プライバシーへの配慮も重要になります。特に、治療中の姿は他人に見られたくないという方が多いと考えられます。診察室では、患者様同士の姿が見えにくくなるような工夫を取り入れることで、患者様の気持ちに寄り添うことができます。
清潔な状態が保てる内装
口内を治療する歯科クリニックは清潔感が命とも言えます。段差の少ないフラットな内装は、掃除もしやすく従業員の方の負担も軽減できます。さらには、ユニバーサルデザインを意識すると、掃除がしやすい上に多くの方が通いやすい空間づくりが目指せます。
リラックスできる歯医者の待合室をつくるには?
治療前後の時間を過ごす待合室は、患者様がなるべくリラックスできる空間にしたいものです。すでに痛みを我慢しているケースも考慮し、少しでも肩の力を抜いて待ち時間を過ごしてもらうためには、どのような空間が好まれるのかを考えて、従来の「歯医者はこわい」というイメージを払拭できるようなデザインを目指していきます。
視覚への配慮
明るすぎる照明ではなく落ち着いた光を取り入れるなど、光のデザインも心穏やかに過ごしてほしい待合室では重要な項目です。特に、治療では明るい照明を浴びることが多いので、治療前後の時間を過ごす待合室は柔らかな照明を選ぶとリラックスして過ごせます。
また、治療自体に恐怖心を抱いている方も少なくありません。診察室が待合室から丸見えにならないよう、扉や衝立の設置、導線のデザインを考慮するなど、待合室が安心できる場所になるよう工夫すると、過度な緊張は避けられるでしょう。
恐怖心を和らげるには「音」にも注目
「歯医者が苦手」と感じる方の多くは、治療中に生じる機器の音にも恐怖心を抱きます。心を落ち着けたい待合室に、治療音が響いてしまっては恐怖心が膨れ上がってしまいます。
診察室の壁や床、診察室と待合室を隔てる扉や間仕切りの素材を、遮音性の高さに注目して選ぶと、治療音が待合室に漏れることを緩和することができます。待合室にリラックスできるBGMを流せる設備を整えることも、治療音が気にならなくなるのでおすすめです。
心理とコンセプトに合わせた色彩設計
店舗デザインにおいて空間の印象を左右する色彩設計は、リラックスできる待合室をつくるためにも重要となります。壁紙など、白を基調とするクリニックが多いと思いますが、天井やカウンター、巾木などにグリーンやブラウンといった心を落ち着ける色を配置すると効果的です。
特にグリーンは、リラックス効果が見込める色なので、木素材と合わせて使うとより落ち着いた空間に仕上がります。ファミリー層向けのコンセプトでは、明るく親しみやすいオレンジやイエローを使用することも多いですが、色の強さが気になる場合はパステル調の色味を選ぶと、明るさを保持しながら目に優しい色合いがつくれます。
治療に専念できる診察室にするために大切なこと
歯科クリニックの要はなんと言っても診察室です。診察室のデザインを考える際は、患者様が緊張しすぎることなく治療に専念できる空間がつくれるよう心がけていきます。
個室や半個室を取り入れて患者様だけの特別な空間に
口を大きく開けて治療をすることも多いので、できるだけ治療中の姿を人に見られたくないという患者様も多いはず。店舗のスペースや予算にもよりますが、個室や半個室など、患者様だけのプライベートなスペースが確保できると、グッと通いやすい印象に変わります。
個室や半個室が難しい場合には、パーティションの配置や、ユニットの向きや配置を工夫することで患者様が治療に専念できる環境が整います。
機能的で安心できる荷物の収納
患者様は、荷物を置いて治療に臨みます。大切な荷物や衣類は患者様から見える清潔な場所に置いておけるようなデザインにすると、安心して治療が受けられるでしょう。カゴを置くだけではなく、患者様のお荷物ブースをしっかりとつくることで、他院との差別化が図れる場合があります。
あたたかみを感じる内装で緊張をほぐす
診察室は清潔感や明るさを重視して、白を基調にすることが多いと思います。しかし、白だけでまとめてしまうと無機質な印象になり、恐怖感や緊張が強まってしまうこともあります。
棚などの什器を木目調にしたり、ポイントでコンセプトカラーを入れたりして、無機質になりすぎないように注意が必要です。また、黒は高級感やシックな印象が出しやすいのでポイントとして使いたくなる色味ですが、色彩心理学では恐怖や不安感を与える色なので、診察室に使用するのは避けた方が良い色と言えます。
歯医者の店舗デザインのポイントについてのまとめ
間取りなどの大きな構造のデザインだけでなく、光や音、色などの細やかな部分までデザインすることで、居心地の良い空間が完成していきます。立地に合わせたコンセプトと患者様の気持ちに寄り添った店舗デザインで、いつまでも愛される歯医者への第一歩を踏み出しましょう。
私たちTO(ティーオー)は、店舗・オフィスなど商業施設の設計を得意とするデザイン設計事務所です。店舗デザインに対して真摯に向き合い、無理のない最適なプランニングをしております。何方様もお気軽にお問い合わせください。