飲食店をやっていくうえで重要なのが、料理の味とお店の雰囲気です。いくら味がおいしくても、ボロボロの外装の飲食店に新規のお客さんが行きたいと思うでしょうか。いくらおいしい料理を提供していても、不衛生な印象を与えてしまい本来獲得できるはずであったお客さんを逃してしまっているかもしれません。
今回はそんな店舗の改装・リフォームについてお話ししていきます。なお、今回の記事は新規で飲食店を開業することは想定しておらず、現在営業している店舗の改装・リフォームを前提としています。また、店舗リニューアルのポイントはこちらのカテゴリーで詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
リフォーム?リノベーション?
話を始める前にまず、よく聞くリフォームとリノベーションの違いにつて触れておきたいと思います。
店舗のリフォームとは
リフォームとは経年劣化などによる老朽化で古くなったり悪くなったりした部分を元の新築の状態に戻すことを指します。外装のはがれた部分を修繕したり、クロスのはがれた部分を張り替えたりすることがリフォームになります。簡単に言うと、古くなって悪くなってきたから元の状態に戻すことです。
店舗のリノベーションとは
一方で、リノベーションとは、既存の建物に新しい機能をつけ足すことで利便性や価値を向上させることやデザイン性を向上させることを指します。キッチンを通りやすいように広くしたり、新たに間仕切りを追加して半個室を作り出したりすることがリノベーションになります。簡単に言えば、現在の状態をよりよくするために新しい機能を加えることやデザイン性を向上させることです。
飲食店の改装にかかる費用相場は?
飲食店の改装を行う場合、どの程度の変更を行うかによって費用が大幅に変わってきます。例えば、店内のクロスの張替えや照明器具の付け替えなどの場合には、工事期間が比較的短くなり、作業自体もそれほど複雑ではないため、比較的安価です。しかし、水回りの場所や厨房の位置の変更、席数の変更などといった大がかりな作業が必要になる場合には、工期も長くなり、費用もそれなりに必要です。
一般的に、飲食店の場合費用の2~4割は厨房工事費と言われています。また、電気・ガス・水道・空調などの工事もかなりの費用が必要となるため、このような設備を含む工事が必要かどうかで費用が大幅に変わります。そのため、一概に費用相場を出すことは難しいですが、最低でも30万以上は必要になってくると覚悟しておいたほうがいいでしょう。
これは、内装だけの場合であって、外装まで手を加える場合には追加で費用が発生するため、外装まで手を加える場合には少なくとも100万くらいは必要になる可能性が高いと思っておいたほうがいいでしょう。
飲食店改装・リフォーム時の注意点
ローンは組めないことが多い?
店舗の改装には多額の費用が掛かるにもかかわらず、多くの場合ローンを組むことができず、施工前と施工後の2回に分けて支払う場合や、施工前・施工中・施工完了後に3分割で支払う場合が多いです。例外的に見積内容によっては融資が受けられる可能性もありますので、一度相談してみてもいいかもしれませんが、かなりの出費になることは覚悟しておいてください。
予算は明確に
施工前に建築デザイン会社と改装内容や仕上がりについて打合せすることになると思いますが、予算を決めずに要望をすべて実現させようとすると、きりがありません。先にも述べたようにローンでの支払いは難しい場合が多いため、きちんと支払いができる範囲で予算を設定し、予算に合わせて必要なことを精査していく必要があります。相手もプロですから予算に合わせて最適な工事プランを提案してくれるはずです。しっかりと話し合って決めていくようにしましょう。
見た目も実用性も重要
冒頭でも述べましたが、お客さんが入店するかどうかを決める要因の一つに店舗の外装を挙げることができます。店舗を利用するお客様は、外装や廊下などの汚れに目が行く傾向があると言われています。そのため、店舗に清潔感を持ってもらうことが、新規顧客やリピーターの獲得につながります。
清潔感を持ってもらうためには、見た目のきれいさはもちろんですが、細かいところまで清掃しやすかったり、問題が生じた際にメンテナンスがしやすかったりする必要があります。おしゃれさを意識しすぎず、この辺りを考慮して店舗のデザインを考える野も必要です。
飲食店のリフォームの適切な時期は?
長年飲食店をやっていると、どうしても油汚れや経年劣化による傷など建物にダメージを与えています。内装はきれいに保っていても、建物の外装は雨風などにさらされ少しずつですが劣化していきますので、一般的に店舗のメンテナンスは、3~5年ごとに手を加えていくとお店が長生きします。細かいことでも少しずつきれいにするため修繕していくと店はきれいなままなのです。決して、まとめてやろうと思わず、先ほどの周期で何かしら手を入れていって方が確実にお店は長く続きます。
また、厨房機器などの耐用年数は10~15年ほどとされているものがほとんどです。そのため、この周期に合わせて店舗の設備などの点検や改修を考えてもいいかもしれません。例えば、店舗の15周年、20周年を迎える前に店舗を改装し、開業日に合わせてリニューアルオープンを行い、集客を図るなどの方法が考えられます。
建物・設備の劣化や周辺環境による浸食度合いにもよりますが、これらを放置しておくと雨漏りや外装の欠損などが発生する恐れがあり、最悪の場合、台風などによる自然災害により倒壊してしまうなどの危険性もあるため、定期的なメンテナンスを行うことも考えたほうがいいかもしれません。
また、シロアリの被害など害虫による被害は詳しく調査しなければわからないこともあるため、定期的に調査などを行うことが望ましいとされています。いずれにしても、店舗の営業状況と改装のメリットをじっくりと考慮した上で適切なタイミングをうかがってください。
業務改善助成金を有効活用する
地方の中小企業向けに、店舗改装の際に支給される助成金があります。代表的なものが、業務改善助成金です。最低賃金の大幅な引き上げを必要とする地域の、賃金水準の底上げを支援する目的で制定されたものです。一定の条件を満たせば受給可能ですので、一度確認してみるのも良いかもしれません。
申請には、各要件を満たしていること、必要書類を提出することが必要ですので、しっかり準備する必要があります。以下に、厚生労働省のHPに記載してある支給のための要件を引用しておりますので、参考程度に確認してみてください。
1賃金引上計画を策定すること
事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)2引上げ後の賃金額を支払うこと
3生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
( (1) 単なる経費削減のための経費、 (2) 職場環境を改善するための経費、 (3)通常の事業活動に伴う経費などは除きます。)4解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など
改装の内容によって行政の点検が必要なことも?
大規模な改装を行う場合には、各自治体が制定する火災予防条例に基づく消防検査が必要になる可能性があります。消防検査とは、避難通路や店舗設備の管理などが消防計画通りに行われているかどうかを確かめる検査のことで、飲食店であれば防火管理上の問題がないか、消防設備が適切に用意されているかなどを確認されます。
この検査が必要になるのは、その建物が「防火対象物」に該当する場合で、防火対象物は、消防署に「工事開始」や「使用開始」の届出をする必要があります。その建物が「防火対象物」かどうかは管理会社やオーナーに問い合わせて事前に確認しましょう。
おわりに
今回は、飲食店における改装・リフォームについてお話ししてきました。実際にコロナ禍で密を避けるための工夫を施したり、業態返還を行ったりと様々は工夫を施して、営業を続けている最中だと思いますが、密を避ける方策の一つとして、改装・リフォーム・リノベーションを考えてみてはいかがでしょうか。
そこまでいかなくてもまずは、店舗の中を見回して傷んでいるところはないか、補修が必要なところがないかを確認してみてください。コロナ禍で世間一般が、衛生面に敏感になってきています。これを機に見直してみるのもいいかと思います。
2021年コロナ禍での店舗改装リニューアルや新規出店の記事やコラムはこちらでまとめています。こちらも合わせてご参照ください。