木造建築で飲食店を新規開業やリニューアルを考えている方も多いでしょう。木造建築は、建築コストが下げられるという利点がありますが、実は法律で細かく決められています。この記事では、飲食店の木造建築に関わる関連法規をわかりやすく紹介します。
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第二の森林と呼ばれる木造建築
近年、木造建築の飲食店が増えてきています。理由は様々ですが、大きな理由の一つに環境問題が挙げられます。木材には炭素の貯蔵効果があるとされており、炭素を削減できます。森林で育っている樹木はもちろん、この効果は建築資材に生まれ変わっても変わりません。
そのため、木造建築を建てることで「あらたな森林」が作られていきます。鉄骨造やRC造が多くなった現代でも、エネルギーの消費量が約1/3まで抑えられる木造建築。冒頭でも触れましたが、木造建築は建築コストも下げられるため、環境にも経営者にも嬉しい資材なのです。
木造店舗における関連法規
木造建築の店舗には、さまざまな規定が設けられています。これから木造店舗を考えている方は、ここで紹介する規定をしっかり把握しておくことが重要です。細かく定められているので、木造店舗を建てる際に役立てば幸いです。
①特殊建築物
木造店舗は、特殊建築物に指定されています。特殊建築物は以下のように厳しい規定があります。
3階以上の部分を店舗とする場合 | 耐火建築物、または避難時や火災時の倒壊防止建築物とすること | 延べ面積200㎡未満は除く |
16mを超える高さで2階建て以下の店舗の場合 | 上記以外にも、特定準耐火建築物でも可能 | |
16m以下の高さで2階を店舗とする場合 | 耐火建築物、または避難時や火災時の倒壊防止建物、準耐火建築物とすること | 床面積の合計が500㎡以上が条件 |
②内装制限
木造建築の店舗では上記に加え、内装も細かく制限されています。飲食店の木造建築が必ずしも当てはまるとは限りませんが、どのような制限がかけられているか知っておくのも必要です。内装制限とはどんなことを指すのか、その概要について紹介します。
内装制限とは
木造建築で重要となる内装制限。この規制は、壁や天井など燃えにくい材料で仕上げることを指します。室内では準不燃材料を使うことが義務づけられています。室内といっても床は内装制限の対象外となっています。また、内装制限の対象となる建物は以下のように決められているため、すべての木造建築が対象というわけではありません。
【内装制限の対象となる木造建築】
- 耐火建築物や準耐火建築物が3階以上の合計が1,000㎡以上
- 準耐火建築物の2階部分が500㎡以上
- 床面積が200㎡以上
防火性能の種別
内装制限で取り扱う防火性能の種別は3種類あります。これらをうまく活用して、火災に備えなければいけません。
不燃材料 | コンクリートやガラス、モルタル、金属板、石膏ボード(厚12以上) |
準不燃材料 | 木毛セメント板(厚15以上)、石膏ボード(厚9以上) |
難燃材料 | 難燃合板(厚5.5以上)、石膏ボード(厚7以上) |
内装制限の緩和条件
厳しく定められている内装制限ですが、2020年4月1日、建築基準法施行令が出され、一定の条件を満たせば緩和されるようになりました。緩和措置が利用できる施設として挙げられているのは、以下の条件を満たしている場合です。
- 天井の高さが3m以上
- 屋外へ避難できる出口の設置
- 100㎡以内で防火設備による区分け
- 避難階の真上階
- 自動式設備の設置
これら複数の条件を満たしていれば、室内で使う資材に対して内装制限が緩和されます。ただし、自治体によって緩和措置の条件が異なってくるため、担当部署へ問い合わせてみてください。
まとめ
木造建築の飲食店はコスト削減できるだけでなく、環境にもやさしい建築物です。環境問題が問われている今、木造建築を選ぶことは賢明なことかもしれません。しかし実際には、木造建築を建てるにあたって多くの制限がかけられています。法律で決められていることなので、どのような制限があるのかしっかり把握しておきましょう。
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