【徹底解説】造作譲渡とは?飲食店の物件契約で必ず出てくる用語をわかりやすく解説します

内装工事中の店舗の店内 建築設計デザインの基礎知識
建築設計デザインの基礎知識

飲食店開業の物件を探す中で、居抜き物件を探していると、「造作譲渡(ぞうさくじょうと)」という言葉をよく耳にすると思います。造作譲渡は基本的にメリットのある契約形態になりますが、安易に受け入れてしまうのは危険です。

造作譲渡のルールやポイントを理解していない状態で契約してしまうと、損失を被る可能性があります。そこで、今回は、居抜き物件の契約で必ず出てくる「造作譲渡」について、わかりやすく解説していきます。

居抜き物件とスケルトン物件とは

居抜き物件とスケルトン物件とは

造作譲渡を説明する前に、前提となる飲食店の賃貸物件の形態についておさらいしておきましょう。飲食店のテナント物件には「居抜き物件」「スケルトン物件」があります。

「居抜き物件」
前のテナントの設備や家具、内装などの一部が残っている物件。
「スケルトン物件」
設備や内装がなくコンクリートが打ちっぱなしになっている物件。

居抜き物件は、簡単に説明すると、前の飲食店が使用していた内装や設備などのモノを、受け継ぐことができる物件です。反対に、スケルトン物件は、内装のすべてが取り払われいる状態の物件です。これから解説していく造作譲渡は、居抜き物件で契約する際に知っておくべき契約になります。

造作譲渡とは

造作譲渡とは

造作譲渡とは、居抜き物件の賃貸借契約時に、造作(内装や設備など)を譲る、または譲り受ける契約のことです。居抜き物件の場合、貸主、借主の双方において前テナントの設備を次の設備でもそのまま使いたい、というケースがよくあります。そこで、前テナント借主、貸主、現テナント借主の3者間の間で造作譲渡契約を結び造作を譲渡します。

造作譲渡に含まれるもの・含まれないもの

造作譲渡に含まれるモノ・含まれないモノ

造作譲渡の契約内容は、貸主、借主の両者の合意によって決まるため、何が造作譲渡に含まれるかなどは大きく異なります。その都度チェックする必要があり、造作譲渡の対象にならないモノも譲り受けることができる可能性があります。

大まかに分別するとすれば、動かせるものは譲渡に入らないという解釈で理解してもらえばいいと思います。(ただし、物件の施主の事業により造作譲渡の条件は変わりますのでその都度細かく確認してください!)

造作譲渡に含まれるもの一覧

  • 造作(天井・壁などの内装)
  • 設備(厨房設備、空調設備、排気設備)
  • 給排
  • 看板
  • トイレ
  • シンク
  • レジ
  • 音響機器
  • 通信機器
    ※契約によっては、椅子やテーブルなど

造作譲渡に含まれないもの一覧

  • 調理器具(場合により譲渡品となる物件もある)
  • 食器

造作譲渡契約の方法

誰との契約なのか

貸主と前テナント間の造作譲渡契約

貸主と前テナントが造作譲渡契約をするタイミングは、前テナントの退去時です。前テナントは原状回復費用の削減を目的として、まだ使用できる内装や設備を借主に譲渡します。これにより、造作の撤去費用が削減されます。

借主は、次テナントが利用することを想定して、まだ使えそうな造作を前テナントから買い取ります。ここで双方の利益が合致し、造作譲渡契約が結ばれます。造作の所有権は造作譲渡契約が結ばれたあとは貸主のものになります。

貸主と新テナント間の造作譲渡契約

.貸主と新テナントが契約する場合、賃貸借契約と一緒に造作譲渡契約をすることができます。貸主は前テナントが残した造作の所有権を有しているので、その所有権を新テナントへ譲渡した形になります。

譲渡契約が締結すると造作の所有権は新テナントへ移るため、新テナントは造作を自由に使うことができます。ただし、故障したときなどの修繕費用の新テナント負担となるため、造作の状態はしっかり見極めましょう。

造作譲渡のメリット・デメリット

造作譲渡のメリット

造作譲渡のメリット

造作譲渡のメリットは主に以下の3つになります。

  • 新テナント:開業コストを抑えられる
  • 新テナント:早く開店を迎えられる
  • 前テナント:閉店時の時間とコストを大幅に抑えられる

造作譲渡をおこなうことにより、新品で揃えるよりも、初期投資の金額を大幅に抑えることができます。内装や設備機器を全て譲り受けることができるからです。また、同じ業態から造作譲渡をする場合、早く開店を迎えられるようになります。

また、前テナント側の閉店時のメリットとして、原状回復の金額・時間を抑えられることです。一般的に、お店を閉店した場合、物件をなにもない空の状態(スケルトン)にしなければなりません。そこで原状回復工事や廃棄物処理をおこなう必要があり、コストと時間が多くかかってしまいます。

しかし、造作譲渡契約をし、設備や内装を新たなテナントに引き継ぐことができたら、原状回復のコスト・時間ともに削減できるため、移転などがスムーズにおこなえるようになります。

造作譲渡のデメリット

造作譲渡のデメリット

新テナント:設備機器等は中古品のため、いつまで保つかわからない
前テナント:退去する際、次のテナントとの契約に時間がかかる可能性がある

造作譲渡の内装や設備機器などは、あくまでも中古品のため、修理代金が余計にかかってしまう可能性があります。事前に設備機器の状態を入念に確認しておきましょう。

前テナントの閉店時のデメリットとしては、次のテナントが見つかりにくい可能性があります。居抜き物件の場合、立地や内装のイメージ、設備機器の状態などが、次のテナントの条件と合致しないと契約にいたりません。

そのため、次のテナントが見つかるまで、時間がかかってしまう可能性があります。早く次のテナントと契約をするには、退去する数ヶ月前に、知り合いツテなどで、新テナントの目星をつけておくといいでしょう。

造作譲渡料の相場

造作譲渡料の相場

造作譲渡料も双方の話し合いで決定します。相場は主に以下のような条件によって価格が決まります。ポイントとしては、譲渡品の状態だけではなく、その物件の価値によって大きく価格が変動します。そのため、相場観を上げることは難しくなっています。

  • 譲渡品の状態
    使用年数、グレード、設置に工事が必要な機器か など
  • 立地
    集客力のある立地であれば造作譲渡料も高くなる
  • 賃貸契約条件
    周辺相場と比較して賃料や敷金が安ければ、造作譲渡料は高くなる
  • 物件の階数
    基本的に1階、2階、地下1階、他の階という順で金額が安くなる

造作譲渡料の相場

造作譲渡料は上述したように、条件(物件の価値)によって大きく変わります。そのため、一概にも相場観を提示することは難しくなっています。例えば、東京都内の一等地の相場は高く、地方都市の3階のテナントの相場は安い、といった具合です。あくまで、非常に大まかな目安となりますが、業種ごとの相場観をご紹介します。

  • 焼肉、中華料理店の設備:200~300万円程度
  • イタリアン、ラーメン、居酒屋の設備:150~250万円程度
  • 弁当、惣菜、カラオケ、パブの設備:100~200万円程度
  • 飲食店全体の平均:100~250万円程度

中華や焼肉店などの重飲食はガス、電気、給排気設備の全てが大型である必要があるため、高価になりがちです。一方、弁当屋やカラオケは必要な設備が小さいため、造作譲渡料が安くなる傾向にあります。

造作譲渡料が0円の場合もある!?
前テナントの物件明け渡し日が特に近かったり、貸主がすぐに次テナントを決めたいと思っていた場合、造作譲渡料が0円で募集されている場合があります。逆に、造作譲渡料が1,000万円前後で募集されていることもあります。

造作譲渡料を安くする方法

造作譲渡料を安くする方法

前テナントの物件明け渡し日が近くなるほどに、造作譲渡料は安くなる傾向にあります。譲渡を望む人がいなければ、まだ使える設備なども賃貸契約により原状回復せざるをえないからです。

原状回復を依頼しなければならない明け渡し日の1ヶ月前ぐらいに交渉すると良いでしょう。ただし、立地がよく競争率の高い場所であれば、ライバルに物件を取られてしまうかもしれません。それでは本末転倒なので、あまりに粘った交渉はおすすめしません。

造作譲渡の注意点

賃貸契約書に譲渡品の処分方法を明記する

賃貸契約書に譲渡品の処分方法を明記する

造作譲渡で必要ない不用品が発生した場合の処分費用の負担を、造作譲渡契約時に話し合いましょう。不用品の処分の負担を巡り、トラブルになることも少なくありません。

特に多いトラブルが「〇〇設備一式」として譲渡された際に、不用品が混入している場合です。対策として、設備一式という記載を改めてもらい、契約時に「何年以内に故障したら、前所有者が修理代金を支払う」などの取り決めを明確に文書化しておきましょう。

譲渡品が壊れていないか

譲渡品が壊れていないか

一度契約が成立した後は、修理と処分にかかる費用などは譲渡された側にあります。譲渡品の状態は契約前にきちんと確認しておきましょう。確認する際は耐用年数も確認しましょう。

リース品の造作譲渡

リースの造作譲渡

造作譲渡の中にリース品が入っているかのチェックが必要です。リース期間が残っている場合、造作譲渡を受けた側がリース契約を引き継ぎます。リース品とは知らずに処分したり、新品と交換しないよう、契約期間や料金をしっかりと確認するようにしましょう。

物件貸主の承諾が必要

物件貸主の承諾が必要

前テナントと新テナント間で造作譲渡契約を次のテナントと結ぶ場合、物件の貸主の許可を得なければなりません。テナントが変わる場合、賃貸借契約を次のテナントと交わす必要があるためです。造作譲渡に譲渡料が発生することを貸主が快く感じない場合もあります。貸主と友好的な関係を築いておくに越したことはない、という理由からも、貸主の承諾を得ておきましょう。

まとめ

飲食店の開業を低価格でスムーズにおこなう

飲食店の開業を低価格でスムーズにおこなうには、「造作譲渡」が適しています。ですが、「造作譲渡」のデメリットや、注意しなければならいないポイントを、しっかりと抑えておく必要があります。造作譲渡で失敗しないためにも、「造作譲渡」の内容をしっかり理解し、上手く活用していきましょう。

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また、店舗を開業するにあたって大切になるのがお店の雰囲気です。こちらの記事では理想の雰囲気のお店を作るコツを詳しく解説しています。ぜひご参照ください。