店舗兼住宅を計画する前に知っておきたい法的条件とは?用途地域や店舗併用住宅と兼用住宅との違いを分かりやすく解説します

店舗独立開業のポイント
店舗独立開業のポイント

店舗兼住宅は、同じ建物の中に居住スペースと店舗スペースが合わさっている住宅です。

これから店舗兼住宅を作り、カフェやサロンを開こうと考えているものの、法的条件がわからず悩まれている方もいるのではないでしょうか。

店舗兼住宅を計画する前に知っておきたい法的条件や店舗併用住宅と兼用住宅との違い、間取りを決めるコツを解説します。店舗兼住宅の建築をスムーズに進めていきたい方はぜひ参考にしてみてください。

私たちTO(ティーオー)は、店舗・オフィスなど商業施設の設計を得意とするデザイン設計事務所です。店舗デザインに対して真摯に向き合い、無理のない最適なプランニングをしております。私たちのデザインの流れについてはこちらのページをご参照ください。

店舗兼住宅とは?

店舗兼住宅とは、同じ建物の中に居住スペースと店舗スペースが合わさっている住宅で、自宅を使って事業をしたい方向けの建物です。店舗兼住宅は、事業スペースと居住スペースが同じ場所であるため、通勤時間がなく、時短につながるメリットがあります。また、テナントを借りる必要がなく、費用を抑えやすいのも魅力です。

ただし、法律によって建物を建てる地域に条件が定められています。さらに、一般住宅とは違い、間取りの工夫をしなければ、住みづらくなってしまう可能性もあります。そのため、店舗兼住宅を考えている人は、法的条件や間取りについての知識をつけることが重要です。

店舗兼住宅と店舗併用住宅の違い

店舗兼住宅と店舗併用住宅は、似たような言葉であるため、違いがよくわからないという人もいるかもしれません。ここでは、違いをわかりやすく解説します。

建築構造の違い

店舗兼住宅と店舗併用住宅は、どちらも事業スペースと居住スペースがある物件で、建物内を行き来できるかどうかに違いがあります。

店舗兼住宅は、建物の中で事業スペースと居住スペースが完全にわけられておらず、行き来できる設計になっています。

一方、店舗併用住宅は、事業スペースと居住スペースが完全にわけられており、屋内で行き来できません。つまり、室内で行き来できれば「兼用」、行き来ができなければ「併用」ということになります。

法律上の違い「用途地域」

店舗兼住宅と店舗併用住宅は、建築基準法で定められている「用途地域」に違いがあります。用途地域とは、土地の景観を守ったり意図しない開発を防いだりする目的で、建物が建てられる地域を規制する決まりです。

たとえば、閑静な住宅街や子どもが遊ぶ公園の近くに工場が建設されると、生活に困る人が出てきます。それを防ぐために用途地域が設定され、その土地に住む人の安心できる暮らしを守っています。

店舗兼住宅の場合は、用途地域の中の「第一種低層住居専用地域」という地域に建てることが可能です。ただ、この地域でも、店舗兼住宅の条件によっては建てられないこともあります。

一方、店舗併用住宅の場合は「第一種低層住居専用地域」に建てられないため、注意が必要です。このように、建物はどこにでも建てられるわけではなく、建築の法律上で決まっています。

店舗兼住宅を建てる前に知っておきたい法的条件

店舗兼住宅を建てられるかどうかは、建築基準法の「用途地域」によって決まります。ここでは、用途地域で定められている詳しい条件について解説します。

第一種低層住居専用地域の場合

「第一種低層住居専用地域」は、住宅を建てるための地域であり、基本的には店舗が建てられない地域です。しかし、一定の条件がそろっている場合のみ、店舗兼住宅を建てることが認められます。

条件としては、店舗の面積が50㎡以下であることに加え、建築物の延べ面積の2分の1未満の場合です。たとえば、美容室や喫茶店、雑貨屋など比較的規模が小さい店舗が対象になることが多いです。

しかし、美容室や喫茶店は30坪程度ほどの面積である店舗が多く、50㎡(約15坪)の大きさだとずいぶん狭い店舗になります。店舗が狭いと、在庫の保管や商品棚の設置スペースの確保が難しく、売上が少なくなってしまうことも考えられます。

そのため、店舗兼住宅を計画する際は、お店のレイアウトや商品構成、販売方法などをしっかりと検討することが重要です。

第一種低層住居専用地域内以外の場合

「第二種低層住居専用地域」は、小中学校のほか、150㎡までのお店などを建てられる地域です。2階以下かつ床面積が150㎡という条件を満たせば、店舗兼住宅を建てることが認められます。

また「第一種中高層住居専用地域」という地域もあります。この地域は、病院や大学のほか、500㎡までのお店などを建てられる地域です。そのため、500㎡までの店舗や飲食店であれば、店舗兼住宅として建てることが認められます。

店舗兼住宅を検討している人は、事前に「用途地域」を確認することが大切です。

店舗兼住宅の間取りで押さえるべきポイント

ここからは、店舗兼住宅の間取りで押さえるべきポイントを紹介します。店舗兼住宅は、通常の住宅や店舗とは違い、住みやすさと働きやすさの両側面から間取りを決めることが重要です。

居住スペースと店舗スペースの動線を分ける

店舗兼住宅の間取りを決める際は、居住スペースと店舗スペースの動線を分けるのが基本です。動線をしっかりわけることで、店舗を利用する人の目を気にせずに済むため、プライベートな空間を確保できます。

しっかりと動線をわけるには、別々の出入口を作るのが効果的です。ただ、店舗兼住宅の定義として、店舗と住居を行き来できるつくりになっていなければいけません。

そのため、間取りを考える際には、店舗から住居および住居から店舗に移動するための動線を考える必要があります。居住スペースと店舗スペースの動線を切り離すと、仕事とプライベートのメリハリが付けやすくなるメリットもあります。

店舗は一階にする

店舗スペースは、1階に作るのがベストです。店舗を2階に作ると、道路側から見たときにお店があることが分かりづらく、集客率が下がってしまいます。

また、階段やエレベーターを利用する必要が出てくるため、1階に店舗があるときに比べ、心理的かつ物理的にもお店に入りづらくなってしまうのです。

間取りを計画する際は、視認性やお客様のお店への入りやすさを考えることで、集客アップにつながります。

店舗の利便性や環境をよく考える

店舗兼住宅の間取りを決める際は、お客様や従業員の気持ちになり、店舗の利便性や環境について考えることも大切です。

たとえば、高齢者や家族連れのお客様をターゲットとしている場合は、バリアフリーや多目的トイレを設置するとよいです。店舗が快適になることで、リピーターや新規顧客が増える結果、集客アップにつながります。

また、面積に余裕がある場合は、お客様と従業員のトイレをわけることで、それぞれが快適に使いやすくなります。

さらに、飲食店やサロンの場合、店内の様子がドライバーや歩行者から見えないようにすることで、お客様の居心地のよさにつながります。間取りの段階で、店舗の利便性や環境をよく考え、誰もが使いやすい快適な店舗兼住宅を目指しましょう。

まとめ

店舗兼住宅と店舗併用住宅は、いずれも同じ建物の中に店舗と住宅が合わさっている住宅です。しかし、店舗スペースと住宅スペースを行き来できるかに違いがあります。

店舗兼住宅は、店舗と住宅を行き来できるのに対し、店舗併用住宅は行き来できません。計画する前には「用途地域」を確認しておきましょう。店舗兼住宅を建てて事業をはじめようと考えている方は、デザイン会社に1度相談してみるとよいでしょう。

株式会社TO(ティーオー)は、店舗設計を得意とするデザイン設計事務所です。これまで様々な業態の店舗のデザインを承って参りました。私たちのデザインしたデザイン事例はこちらのページをご参照ください。