日本の伝統工芸を用いた店舗デザインのポイント|実際の事例をもとに伝統とモダンを融合させるコツをご紹介します

店舗デザインのポイント
店舗デザインのポイント

奥ゆかしさや落ち着きのある空間を表現できる日本の伝統工芸は、店舗デザインにおいても人気です。その一方で、「伝統工芸を使ったデザインにしたいけど、どう組み込めばいいかわからない」と、デザインへの反映の仕方に悩む声も聞かれます。

店舗の個性を引き立てるため、デザインに組み込む際のポイントをおさえておきましょう。日本の伝統工芸を用いて店舗をデザインするメリットや実際の事例なども紹介していきます。

こちらの記事で掲載している店舗の画像は、すべて私たち株式会社TOでデザインいたしました。気になるデザインがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

伝統工芸を店舗デザインに用いるメリット

和風なデザインを引き立てる要素として使われる伝統工芸ですが、店舗デザインに用いることでどんなメリットが得られるのでしょうか。店舗を設計する際に、思わず伝統工芸を取り入れたくなるメリットを3つ紹介します。

個性と高級感を両立できる

伝統工芸は空間において、インパクトを与えて「他にはないここだけの空間」に仕上げることに長けた技術と言えます。それでいて、ただインパクトを与えるだけではなく、職人の洗練された技術によって高級感も生まれます。

高級な空間を演出する際、シンプルなデザインが好まれがちですが、伝統工芸をうまく配置すると店舗の個性を出しながら、高級感のある空間が演出できます。

コンセプトがはっきりする

店舗のコンセプトとして人気の「和風」や「和モダン」ですが、これらのコンセプトを際立たせるアイテムとして、伝統工芸の活用は非常に有効です。

和のコンセプトは、色や配置、小物でも雰囲気を出せますが、それらで和を強く出そうとすると使用する要素が多くなり、まとまりがなくなることも考えられます。伝統工芸をアクセントとして加えることで、シンプルな空間でも和のコンセプトが伝わりやすく、要素が増えすぎてしまうことを防げます。

職人技でぬくもりを感じる空間になる

伝統工芸は職人の手によって作り上げられるものが多く、デザインとしては精密ながらも、どこか人のぬくもりを感じられる点が長所と言えます。

和モダンに欠かせないのは、人と人との思いやりが伝わる空間づくりです。「デザイン」と聞くと、機能的で洗練されたものを想像しがちですが、伝統工芸はいわば血の通ったデザインを生み出すことができる要素となり得ます。

伝統工芸をモダンに取り入れる時のポイント

店舗デザインで人気の和モダンコンセプトですが、和に注力しすぎるとただの和空間になってしまうことも考えられます。ほどよく和で、ほどよくモダンな、洗練された和モダン空間をつくるポイントを解説します。

技術の種類を絞る

伝統工芸は和を強調する上で積極的に使用したい技術ですが、技術の種類を多く取り入れてしまうと、日本の古典的な空間に近くなることがあります。

例えば、畳に襖絵、障子、網代天井など、一気に使うとそれはただの和室になってしまうのです。使用する伝統工芸は1種類、多くても2種類に絞り、近代的な空間と組み合わせることで、心地の良い和モダンに仕上がります。

多用しすぎない

技術を1種類に絞っても、それを至る所で多用するとうるささを感じてしまい、落ち着いた空間から遠ざかっていきます。和モダンというと、和を前面に出したくなりますが、基本的にはモダンの要素を強くすることでまとまりが生まれます。

店舗の形態やコンセプトにもよりますが、モダンと和の割合として、まずは8:2、もしくは7:3くらいに設定するとちょうどいいかもしれません。和要素の2〜3割の中に伝統工芸も取り入れていくことで、店舗の良いアクセントとして引き立ちます。

照明を効果的に活用する

空間にメリハリを持たせるためにも重要な照明は、伝統工芸をより印象的に魅せる効果も得られるので、照明計画は念入りに行います。

注目させたいところをピンスポット的に照らすと、周りの要素が視覚に入りにくくなり、目に入る要素を絞れます。伝統工芸を使った部分を照明で強調することもできるので、伝統工芸を多用しすぎなくてもインパクトのある空間になる場合がほとんどです。

強調効果だけでなく、照明はモダン感を出しやすい要素でもあるので、照明もデザインのひとつとして丁寧に取り入れていきます。

店舗に取り入れやすい伝統工芸の種類

内装のデザインとして取り入れやすい伝統工芸の種類と特性にあった使用場所をまとめました。

左官、漆喰、土壁、化粧煉瓦、織物、組子細工、網代
天井 網代
パーテーション 襖、障子、屏風、織物、染物、組子細工、網代

左官や漆喰、土壁など、重量のあるものは、壁や備え付けの仕切りなどに使われることが多い技術です。植物を編み込んだ網代は、どこにでも使いやすく編み方も豊富でデザインとして組み込みやすい技術と言えます。

組子細工は、組子細工自体のデザイン性が高く、一種のアートのような感覚で使用できる上に上品に仕上がります。

もちろん、紹介した使用場所は一例にすぎません。来店したお客様があっと驚く取り入れ方をするのも、個性を引き立たせる手段として有効です。

伝統工芸を用いた店舗デザインの事例

店舗デザインの中に伝統工芸を取り入れてみたいけど、どうやればかっこよく取り入れられるかわからないという方も多いと思います。私たちTOが実際にデザインした店舗の事例を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

左官がインパクト大の和風レストラン

エントランス突き当たりにある石や壁面を特殊左官で仕上げた内装が印象的な店舗です。限られた色数と木のぬくもりを感じるシンプルなデザインに、特殊左官がほどよいスパイスとなり、空間を引き締めています。

この特殊左官があることで、どこにもないこの店舗だけの空間を演出します。高級店として、価格帯に見合った品の良いデザインで、利用されるお客様の満足度を上げています。

組子細工が美しい歯科クリニック

一見カフェのようにも見える、外装からおしゃれな歯科クリニックは、日本の伝統工芸である組子細工をふんだんに使い、デザインしました。内装は、歯科クリニックらしい清潔感のある白を基調にしたカラーとグレーのアクセントカラーで統一し、ぬくもり溢れる木材をたっぷりと使用しています。

内装のポイントとして組子細工を取り入れることで、柔らかな印象の中にも精密さがあるクリニックにぴったりのデザインが生まれました。白とグレーだけだと、少し寂しい印象になりがちですが、組子細工の配置によって、通いたくなるあたたかみのあるクリニックを演出できているように思います。

襖絵で魅せる高級焼肉店

2つの個室を仕切る印象的な襖の絵は、京都西陣織の絵柄士に描いてもらったものです。絵自体も、伝統的な柄ながらどこかモダンな印象も受ける色使いで、店内のアクセントとして活きています。

カウンター上部には、牛の霜降りを竹で表現しており、モダンなデザインと日本ならではの素材をうまく融合させています。和の要素を多く取り入れながらも、照明効果とシンプルなカラーの椅子が空間を引き締めてる、統一感のある内装です。

伝統工芸を用いた店舗デザインのまとめ

脈々と受け継がれてきた日本の伝統工芸は、デザインに取り入れることで他の店舗との差別化がしやすく、コンセプトもはっきりとさせやすいため、積極的に使用していきたい技術です。

日本らしさをところどころに散りばめて、居心地の良い空間を作り上げましょう。個性的かつ落ち着きのある、和モダン空間を実現したいとお悩みの方は、ぜひ私たちTOにご相談ください。

和風(和モダン)の店舗をデザイン・施工する場合の考え方と費用、デザイン事例については、下記の特集ページでより詳しく解説しています。私たちTOは、和の伝統を現代に息づかせる和風の店舗デザインを得意としています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。

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