カウンターはお店の中でもすぐに目に入るお店の顔とも言える存在です。今回は、カウンターの役割を明確に示し、どのようなカウンターの種類があるのか説明いたします。これから飲食店を新規出店する予定の皆さまは、是非参考にしてみてください。
また、カウンターをデザインする際には厨房設計も合わせて考えなければなりません。厨房設計についてはこちらの記事で詳しく解説しております。こちらも合わせてご参照下さい。
飲食店におけるカウンターの役割
カウンターから厨房が見える
カウンター席は厨房が目の前にあるためお客様は料理風景を間近で見ることができます。お寿司を握ったり鉄板で、焼いたりする店のパフォーマンスを楽しんでもらうためにも飲食店におけるカウンターは重要です。こういったキッチンをオープンキッチンと言います。
料理の提供スピードを早く行える
カウンターと厨房は対面しているため、従業員が外に出なくても料理を目の前から渡すことができます。そのためスピードがあがり、効率よく料理の提供ができます。また、お客様が料理を注文する際も指差しや声掛けで即座に注文することができます。
従業員とお客様のコミュケーションがとりやすい
カウンターお客様との目線の高さを意識して、設計することを意識しましょう。そうすることでお客様と顔を合わせて、料理を作りながらコミュニケーションを取ることができます。ここで大切なのは、基本的にお客様を見下ろさない高さにデザイナーがきちんと設計することです。
お一人様需要に対応
近年さらに増えている飲食店のお一人様需要。カウンターは気軽に一人がけで座れることからお一人様のお客様も座りやすいです。一人がけのお客様が増えれば、店舗のスペースを無駄なく活用することができます。
カウンターの種類①カウンターの高さの違い
カウンターには、色々なパターンによって種類が分類されます。まずは高さの違いによってみてみましょう。なお、今回の記事でのカウンタータイプの設定は、カウンター内と客席の床がフラットであることが前提の話です。
ローカウンター
一般家庭で使われるダイニングテーブルと同じくらいで、高さは700mmほどです。ローカウンターのメリットは座席が低く、足が地面につくためゆったりと座ることが出来ることです。お客様の快適さを追求したカウンターといえるでしょう。
そのため、滞在時間も伸び、客単価の上昇にも繋がります。ただし、調理スタッフの目線が高くなってしまい、お客様を見下ろすような設計になり、圧迫感を感じさせてしまうかもしれません。カウンターは、お客様と厨房内の高さ関係を常に意識することが大切です。
ミドルカウンター
ローカウンターとハイカウンターの間の高さで、およそ950mmほどのものを指します。ちょうど家庭用キッチンの流しくらいの高さです。足が地面につくか、つかないかの高さがちょうどよく、料理がメインのバルなどでよく採用されています。
ただし、対応する椅子がまだまだ少なく、ミドルカウンターを採用している店舗は、現状あまり多くはありません。ミドルカウンターを採用するときは椅子で高さ調整をすることがとても大切です。
ハイカウンター
ハイカウンターは、1050mmほどあります。メリットは、調理スタッフと目線が合わせやすくなることで、それによってコミュニケーションも自然と増えるでしょう。ドリンク主体のバーで主に採用されています。
デメリットは、椅子が高く床に足がつかない状態になってしまうので、足置きを設置するなどの工夫を行い、お客様のリラックス出来る環境づくりを意識してみて内装デザインしてみましょう。
カウンターの種類②カウンターの形の違い
次にカウンターの形による違いを見てみましょう。カウンターの形状によってI字型、コの字型、L字型と名称が付けられています。
I字型カウンター
I字型は文字通り、お客様が隣り合わせに横一列に並ぶ机の状態になります。調理スタッフとは、お客様全員が対面で話せる内装デザインとなっています。バーや居酒屋、ラーメン屋などで広く採用されています。
ただし、幅を長くするほどスタッフとの距離も出来てしまい、食事の進み具合を確認することがおろそかになってしまう可能性もあるので注意しましょう。費用も比較的安価で、スペースも取らないため、カウンターの内装デザインを迷っている方には手をつけやすい形かもしれません。
コの字型カウンター
コの字型は、対面と両サイドにも座席をもうけるカウンターのデザインになります。古くから寿司店や和食店で採用されてきました。調理スタッフから全方面のお客様を見渡せるため、様子を確認しやすいというメリットがあります。
また、カウンター内のスタッフは最小限の移動や人員で抑えられるため、作業パフォーマンスの上昇も期待できるでしょう。居酒屋のように、飲み物や料理の注文頻度が多いお店には向いています。
L字型カウンター
I字カウンターに1片に垂直に席が設けられた形のカウンターです。もう一方には出入り口や調理器具の保管スペースを設けることができ、レイアウトに無駄がありません。また、コの字カウンタ同様に対面だけではなく、横からも調理スタッフの手元を見ることが出来ます。
とくに高級店での採用が多く、魚を目の前でさばいてくれるお寿司屋さんや、お肉を焼いてくれる鉄板焼きなどのように調理の過程をパフォーマンスとして見せたい飲食店とは相性がいいでしょう。
カウンターの種類③カウンターの素材の違い
カウンターに使われている素材による違いです。例えば一見ただの木材に見えても合板、集成材、無垢材などの違いがあり、どの素材にするかによって価格も大きく異なります。お店の雰囲気と定休する料理に合わせて最適な素材を選びましょう
合板カウンター
合板とはベニヤ板などを互い違いに重ねて貼り合わせた素材です。木の節などがあるため、価格は安くラフな印象のカウンターデザインが出来ます。安価でも木目を表現でき、存在感のあるカウンターを造りたい方におすすめです。
集成材カウンター
こちらは屑状の木材を接着剤で固めて板にして作り直した素材です。木特有の反りが出にくいということが特徴です。ただし、無垢材に比べると、安い感じがでてしまい、風情は減ってしまいます。
突板(つきいた)カウンター
突板は木材をうすく切ったものをベニヤに貼り合わせた素材です。木の皮を使用して作るため木の暖かみや風合いを出したい内装にはオススメの素材です。合板と同じく反りが出づらく扱いやすい素材です。
無垢材カウンター
木材そのものを天板にします。重厚感や店舗の雰囲気を作るには抜群のカウンター天板です。高級店のカウンターにはよく無垢材が使用されています。高級寿司店のカウンターをイメージされるとわかりやすいと思います。
左官カウンター
画像出典:MORTEX
近年人気が高まっているセメントやモルタルで作られたコンクリート状の素材です。ミニマルで無機質な印象を与えることが出来て、耐水性にも優れています。左官の種類も多く、色や質感なども店舗の雰囲気にあったものを選ぶとよいでしょう。しかし、価格は高くなってしまうという点や、衝撃によりひび割れなどのリスクもあるという可能性は理解しておきましょう。
メラミンカウンター(通称:フラッシュ)
メラミンとは人工的に樹脂で作られたプラスチック状の素材です。耐熱性・耐水性・耐候性に優れているという特徴があります。そのためメンテナンスも気軽に行えますし、左官や木製に比べて費用を安く抑えることが出来ます。通称フラッシュと呼びます。昔ながらのバーにあるカウンターをイメージされるとわかりやすいと思います。
カウンターを作るときの注意点
カウンターの種類について、高さ・形・素材で説明してきましたが、カウンターもただつくれば良いというわけではありません。設計する際の注意点を3つ解説します。
席同士の間隔を空ける
一般的に、一人当たりの食事スペースの幅は600mmほどであるため、カウンターの席同士の幅は750mmほどがよいでしょう。客席数をただ多くすればよいというわけではありません。
カウンターの奥行きは料理がおけるスペースを確保する
奥行を決める際に、考慮しなければならないのはお客様が注文するであろう料理がすべて机の上に乗るかどうかです。平均的に450~500mmで統一している店舗が多いです。実際に什器を並べてみることで最適な幅がわかるでしょう。
コロナウイルスによる影響を考える
現在のコロナウイルスによる影響を考えると、ソーシャルディスタンスを取ったほうがよいため1000mmほどの感覚を取るくらいがよいでしょう。もしくは、仕切りを付けて飛沫が飛ばないような対策も必要です。
まとめ
カウンターは形や高さによって、飲食店の提供する料理や業態によって、向き、不向きがあります。どのような店舗を出したいのかを入念にイメージしてからカウンターを決めるようにしましょう。
株式会社TO(ティーオー)は、飲食店設計を得意とするデザイン事務所です。お客様にとって「心地よい空間とはなにか」という問いに対して真摯に向き合い、お客様に最適なプランニングをしております。
これまでカウンターの役割や素材の種類、デザインについて紹介してきましたがいかがだったでしょうか。また、店舗設計に関する基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事も合わせてご参照ください。